夏の海のコテージで (ページ3)

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3.誓いページ3

学校の皆や世間的には、別に何も変わらない、普通の1年半だったかもしれないけど。

僕らにとっては、長い長い1年半やった。

それは、謙杜や恭平、家族にとったら、僕が想像するより、もっともっと大変な時間やったと思う。

何度も襲ってくる痛みや苦しみに、辛そうな表情を浮かべる家族を平気な顔して見てられる人なんてどこにもおらんやろ。

それは実際、お見舞いに行ってた僕も薄々感じてはいたんだ。

いつも通り僕と話してくれる謙杜だったけど、お見舞いに行く度にどんどん小さくなっていくその背中は、最初の方こそ気の所為程度だったのに、いつの間にか、最後の方は誰が見ても明らかに衰弱していた。

話すスピードや動きは鈍くなったし、僕が質問しても、ときどき何を考えているのか、ボーッと一点を見つめていることもあって。

謙杜がこんなに苦しんで治療に耐えているのに、謙杜を蝕む病気の影は一向に消えてはくれんかった。

僕がある日、特別な許可をもらって謙杜の病院に泊まったとき。

「うぅ」と隣でなにか唸る声が聞こえて、飛び起きて隣を見れば、謙杜が蹲り、苦しそうに肩で息をしているのが分かった。

すぐにかけよれば、ギュッと目を瞑り、尋常じゃないぐらいの冷や汗をかいていて、緊急事態なのは火を見るより明らかだった。

それでも焦っていた僕は「謙杜！？大丈夫か！？」と何度も呼びかけ、僕の声が聞こえていないのか、それとも聞こえているけど返事ができないのか、謙杜は痛みと呼吸だけに集中しているみたいだった。

どうすればいいか分からずただただ背中をさすっていると僕の大声を聞き付けたのか、様子を見に来た看護師さんが謙杜の様子を見るなりあわててナースコールを押して「815号室！高橋謙杜くん！発作です、援助願います」と助けを求めているのを見て、どれだけ自分が焦っていたのか、どうしてすぐに助けを求められなかったのか、後でものすごく後悔した。

これが、はじめてみた謙杜の病気の実状やった。

いままでは、謙杜が元気なときにしかお見舞いはさせてもらえんかったから。

お医者さんや看護師に囲まれて、なおも苦しそうに嘔吐を始めた謙杜に、悲しみというより、怒りに近い感情が湧き上がって、僕は自分の拳をギュッと握りしめた。

どうして神様は、謙杜を味方にしてくれんの？

いつになったら、謙杜はこの苦しみから解放されんの？

謙杜を守ろうと、自分に誓った瞬間でもあった。