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撮影に復帰すると、共演者の方々から口々に心配の声を頂いた。
"大丈夫です"と返すしかない。
例え、大丈夫じゃなくても。
AY「A、まだ少し顔色悪いわよ。
大丈夫だなんて、嘘ばっかり。」
ひんやりとした彩さんの手が、火照った額に当てられる。
AY「ほら、少し熱い。休ませてもらう?」
『ううん、やる。』
"病は気から"って昔からよく言うけど、それは本当だと思う。
先日のことをまだ消化しきれてないのと、ユンギがいない心細さとが重なって、それが体調に現れていた。
AY「あんた、バカね。」
『今に始まったことじゃないでしょ?(笑)』
私の無理を咎めるなら今さら。
事務所の社長も、そんな私を死ぬほど心配してくれるけど。
AY「冗談じゃないわよ。
社長から毎日のように鬼電くるんだから。」
私にも電話は来るけど、彩さんに来る電話の量を比べたら雲泥の差だと思う。
多分、私に聞いても"大丈夫"しか言わないから。
AY「今回のことも心配してた……
ユンギくんにぶちギレてたわ。
なんとか宥めたけど。」
デビュー当時からずっとお世話になっている社長だから、私のことを娘みたいに思ってくれてるんだ。
『今回のことは、私たち二人が悪かったの。
ユンギが怒られるなら、私だって怒られなきゃ。』
私たちの……私のせいで生まれてこられなかった命に、一生をかけて償うって決めた。
AY「ふふ、」
『彩さん……?』
優しく笑った彩さんは、くしゃりと私の頭を撫でる。
AY「きっとあなたたちは大丈夫。報われるわ。」
何も信憑性のない言葉なのに、妙に安心してしまって……
少しだけ泣いた。
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作者名:mayumayu | 作成日時:2019年12月9日 1時