言えない ページ44
SE side
言えなかった……
だってあんなに頑張っているのに……
もう、今までみたいに踊れないなんて……
足が元に戻る確率は、１０%もないなんて……
そんな残酷なこと、僕には言えない。
いや、きっと僕じゃなくたって言えない。
『疲れてるの？私は大丈夫だから、帰って寝たら？』
SE「僕の唯一の癒しの時間を奪う気ですか？(笑)」
『癒しって(笑)。』
でもいつかは知らなければならない。
受け入れて、前に進まなければならない。
今はまだ、その時じゃないだけ。
SE「そろそろ病室戻りましょうか？
リハビリで疲れたでしょう？」
『うーん、そうしようかな。』
病室に戻り、ヌナを抱き上げてベッドに降ろす。
SE「甘いもの、飲みたくありません？」
『どうして？』
SE「疲れた時には甘いものですよ。」
『あー、なんとなく展開が読めた(笑)。』
僕が提案する“甘いもの”なんて、一つしかないからね(笑)。
SE「バブルティー、買ってきますね。」
『やっぱり(笑)。オッパが飲みたいだけじゃないの？』
SE「一理あります(笑)。」
『ふふ、でも私も飲みたいからお願いしようかな(笑)。』
SE「わかりました、行ってきますね。」
扉を閉めて、ため息をつく。
「バブルティー買ってくる」とか言って、本当は逃げたかったのかもしれない。
あの屈託のない笑顔から……
何も知らない、無邪気な彼女から……
.
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作者名：mayumayu | 作成日時：2016年9月28日 1時
