邪悪なる吐息は耳元に ページ7
アリアたちが第一階層にて
探索をしている最中にも
最奥に潜む魔物は悠々と昼寝をしていた。
寝息も立てず、姿を消して。
「アリア」
「ん?」
ライベルグはアルデンクの描いた地図を見て
通路の奥を見やった。
「だいぶ奥まで来たが…魔物と遭遇したか?」
「…してないわね」
「FB(フロアボス)だね」
アルデンクの言葉に頷く。
フロアボス、FBとは迷宮の階層ごとにいる
魔物である。
突然現れるモブとは違い、単体で行動し
一定の距離と規則性を保っている。
「気配があるのか?」
「あの、邪悪な気配はしてません。
ただ…」
「ただ?」
「恐ろしいくらいに心が澄んでいる存在が
確認できます」
「心が澄んでたら悪いのか?」
シャギルの問いに厳しい顔で頷いた。
「人間も動物も魔物も、誰でも心は
荒んでいるし歪んでいる。
そんな中でここまで澄んでいるとは…」
「む、来るぞ」
アローズは鋭い牙を覗かせた。
「FBか!?」
「…恐らくな」
とすっ、とすっ、とすっ
FBと言われて思い浮かべる足音とはかけ離れた
音が響いた。
「わぁー人間だぁー。
お菓子持ってる?お花で遊びに行こうよー」
あまりにも幼い声に呆気にとられた。
「お菓子なら。はい」
シュルーフがショルダーバッグから取り出した
クッキーをすぐさま口に詰め込んだ。
「もぐ、もぐもぐ。おいしーー!
あ、僕の名前はディアルっていうんだぁ。
よろしくねぇー」
のんびりとした口調に何か裏がありそうな、
なさそうな何かをアリアは感じ取った。
「ぱっと見ただの緑色のテディベアね。
FBって感じはしないけど」
「えふびー?」
ディアルは口元についたクッキーの欠片を
払って立ち上がった。
「あーボスのことー?
多分この階層にはいないと思うよぉ?」
「こいつは確かにFBだが…
今は力を隠してる感じだな。油断するなよ」
「…ねぇディアル、そこを通りたいんだけど
通らせてもらえる?」
ディアルは黒いつぶらな瞳を少し怒ったような
形に変えた。
「ここは通っちゃダメなのー。
通らせたらダメって言われてるのー」
シャギルが目を怒らせて剣を抜きながら
ディアルに向かおうとしたその時
シュルーフが腕を掴んだ。
「おい、離せ」
「あ、あのっ、私に任せてくれませんか!」
「お前に何とかできんのかよ」
「シャギル、それは失礼だよ」
仕方なく見守るシャギル。
シュルーフはとっておきの蜂蜜パンを
取り出して道を空けてもらった。
「どうぞー」
呆気なく道は開いたのだった。
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The - 面白いです (2015年12月26日 23時) (レス) id: 6bb41c1304 (このIDを非表示/違反報告)
シャイン&ダーク - ディアルチョロいな (2015年10月9日 23時) (レス) id: 5b2ad4fb97 (このIDを非表示/違反報告)
コバルト(プロフ) - ありかどうございますー!これからも個性的なキャラを出していきますのでよろしくです! (2015年10月7日 8時) (レス) id: 0b47d786fb (このIDを非表示/違反報告)
ちーくん - この作品大好きです! キャラ&が面白いー笑笑 これからもファンです応援してます! (2015年9月27日 19時) (レス) id: db2d6b81b2 (このIDを非表示/違反報告)
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