アリアの行方 ページ33
「げほっ…げほっげほっ…！」
シャギルは咳き込みながら部屋の中を覗いた。
毒が充満しているとはいえ、
まだ部屋の中にアリアが残っている。
目と鼻から絶え間なく水分が出ていたが
ぎりぎりの状態でシャギルは叫んだ。
「おい！おーい！アリアー！返事しろ！」
しかし、返ってきたのは反響した自身の声だけだった。
嫌な考えが頭をよぎる。
するとアルデンクがひょいと隙間から覗き込んだ。
「毒で中が見えないな…。ちょっとシャギル失礼」
「ん？おー」
アルデンクは再び固有術式を詠唱した。
「《聖霊精製》」
魔力の波が起こったが、
アルデンクが想像していた結果にはならなかったようだ。
「あれ…おかしいな。
確かに風聖霊を呼び出したはずなのに」
「詠唱詞がおかしかったんじゃねぇか？」
「いや、それはないよ。
固有術式には最低限の詠唱詞しか存在しないから。
うーん、さっき風に変えたときに
ちゃんと変わったから、いると思うんだけどなぁ」
アルデンクの様子を横目で見ていたシャギルは
コマンドを入力し始めた。
「SD-MR2」
『コマンドを入力してください』
無機質な女性の声が返ってくる。
「《風聖霊の巫女》
シルフィード・エレメント。
我の呼びかけに応えよ」
『新規コマンド入力確認。《風聖霊の巫女》現界』
「…今何をしたんだい？」
アルデンクが怪訝な顔をしてシャギルを見つめた。
「聖霊がいねぇなら造りゃいいと思ってよ。
聖霊石を埋め込んだんだ。
いつかこういうときが来ると思ってな」
アルデンクは驚きを隠せないようだったが
都市文字を詠唱した。
「《強風》ブラーゼン」
強い風が部屋に吹き込み、毒素を飛ばす。
「よし。入れるはずだよ」
「…おお」
部屋に入ると、まだ龍の頭部から水が出ていた。
アリアの姿は見当たらなかった。
「いねぇ…」
「ん？あれは…」
部屋の隅に転がっている男を見つけ
アルデンクが駆け寄った。
「おい、あぶねぇぞ」
「いや、」
うつ伏せの男を仰向けに転がす。
「ライ！」「！？」
右肩から左胸にかけて浅く切り裂かれている。
「どうしたんだい！？」
「…ぁっ…ぐっ…り、あ…」
「え？アグリア？」
「ちが…っつ…あ、りぁ…」
ライベルグは声を絞り出しつつ明後日の方向を指差した。
「…向こうか」
「おれ、は…いぃ…っ。い、け…」
「…わかった。ごめん」
「えっおい、そんなあっさり」
「いいから、行こう」
アルデンクとシャギルはライベルグを回復させて
指差した方へ向かった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
The - 面白いです (2015年12月26日 23時) (
レス) id: 6bb41c1304 (このIDを非表示/違反報告)
シャイン＆ダーク - ディアルチョロいな (2015年10月9日 23時) (レス) id: 5b2ad4fb97 (このIDを非表示/違反報告)
コバルト(プロフ) - ありかどうございますー！これからも個性的なキャラを出していきますのでよろしくです！ (2015年10月7日 8時) (レス) id: 0b47d786fb (このIDを非表示/違反報告)
ちーくん - この作品大好きです！ キャラ&が面白いー笑笑 これからもファンです応援してます！ (2015年9月27日 19時) (レス) id: db2d6b81b2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
