- ページ42
-
徒歩圏内の宿まで歩いて戻ろうと
皆が歩を進めたのを確認して
1番後ろをついて行こうとすると、
「お腹いっぱーい」
さっき聞いた声とまんまおなじ声が
真後ろから聞こえてきて、反射的に振り返った。
『ふっか……？』
やっちゃいけない事だと分かっているのに。
俺の声に彼が反応して目が合う
ふっかに俺の記憶は一切残っていないから、
なぜ見られているのか疑問といった様子だった。
何とか気合いで目を逸らしたあとで、近づいてくる足音
なんて言い訳しようか、どう言えば……
「おにーさん」
『！？、はい』
「レディーがお迎え来てるよ〜」
『え？』
その言葉と共に服の裾を引っ張られて視線をずらすと、
俺が着いてこないのが嫌だったのか
わざわざ戻ってきてくれたみたいだった
『おう、ごめんごめん。先行ってていいのに』
「パパうるさいから……翔太くんと行く」
『パパ泣くんじゃねぇの』
「うるさいもん、ママにゲンコツされてた」
彩春に引っ張られるまま歩き出す。
振り返るとまたふっかと目が合って、
他人のフリするために会釈だけすると
ひらひらと手を振った後お子さんを軽々抱っこしてから
奥さんと手を繋いで反対方向に行ってしまった。
少し寂しさがあったけれど
何故起こさず来てしまったのかと言う
後悔が晴れた気がする。
なんも変わってなくて、安心した。
この息抜きのおかげで母さんの満面の笑みを久々に見れて、
姉貴からも感謝された。
恨みとか怨念を少しでも減らせたらこんなに楽なのか。
まだまだアイツが犯した事について
俺らが償う事が沢山あるし、
生活しにくい部分はどうしても無くすことは出来ない。
けど、それでも、
今の方がずっと幸せだと俺は感じる。
end.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 139人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
chirua(プロフ) - ！さん» ご感想頂きありがとうございます、とても嬉しく光栄です。今後ともどうぞよろしくお願いします (11月3日 16時) (
レス) id: 9ab6ec17b9 (このIDを非表示/違反報告)
！(プロフ) - 久しぶりにこのサイトでとても引きこまれる作品を読みました。彼が少しでも幸せだなと思える日が来ることを願っています。次回も楽しみにしております。 (11月2日 23時) (レス) id: 50e233f32f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：chirua | 作成日時：2023年10月10日 17時
