区別、進歩、明天 ページ32
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本堂を出たあとお賽銭が無いのを謝って手だけ合わせた。
『今よりは、幸せになれますように』
「……」
『……時間割いてもらってありがとうございました』
「いえ。……悲観的になりすぎずに。次会うときは青いタヌキがいる世界線がいいですね」
『やっぱりふざけてますよね？』
「はい」
『……はい？』
「はい」
ヘンなの連れて帰るどころか、
ヘンなのに会ってしまったような。
理解ある人じゃないとつるみにくそうだけど、
個人的には面白い人だとは思った。
割と早く話し済んだし、
帰ったらまだふっか寝てるかもしれないな。
仕方ないから朝飯(と言いつつ昼飯)作ってやるか
『涼し……』
現世だと今よりも暖かいのか、
今の気温が涼しく感じてちょっとだけ懐かしいような。
ここ数日で色んなことがありすぎて、
殺したい程憎んでいたアイツの事が
頭の隅に追いやられているのは初めてだったかもしれない。
『やべ間違った』
考え事しながらダラダラ歩いてたから
曲がる角ひとつ間違えた。
引き返そうかと思ったけど、多分ここら辺なら
どこから行っても繋がってるだろうと
目の前にあった路地を曲がって狭い道を通る。
『……ん、あ。お前、神社の白猫じゃん』
アニメとかで見る感じの、
塀の上で休んでる猫と目が合いました的な。
さっき出ていったあとこんな所にいたのか
うんともすんとも言わずに
器用に塀を歩くそいつを少し後ろから追いかけた。
当たり前だけど塀の上を行くから
道を歩く俺よりも足は早いわけで、
時々小走りになりながら意味もなく追いかける。
『どこ行くんだよ……』
やっと追いついた猫の背中？に問いかけるけど返答はなし
…………
……
暫く待ったあとその場を立ち去ろうと、
じゃあなと声をかけると
にゃあと一回だけ鳴いて突然走り出した。
『お前そっち道路だって、あぶねえ…！』
……なんかこれ、凄く既視感ある様な
猫追いかけて道路に飛び出してる自分が、
第三者目線でスローモーションのように見える。
道路の反対側に着いてこちらを振り返る白猫に
問いかけようとして口を開くも俺はまだ道路上な訳で。
視界の隅にいる大きめの車に
このまま轢かれるかもしれないと足を踏ん張る
白猫の鳴く声だけが聞こえて、視界が暗転した。
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chirua(プロフ) - ！さん» ご感想頂きありがとうございます、とても嬉しく光栄です。今後ともどうぞよろしくお願いします (11月3日 16時) (
レス) id: 9ab6ec17b9 (このIDを非表示/違反報告)
！(プロフ) - 久しぶりにこのサイトでとても引きこまれる作品を読みました。彼が少しでも幸せだなと思える日が来ることを願っています。次回も楽しみにしております。 (11月2日 23時) (レス) id: 50e233f32f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：chirua | 作成日時：2023年10月10日 17時
