苦痛,困難,参事 ページ2
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『おはようございます』
子供でも年寄りでも
1度覚えればできてしまうような工場作業。
俺に出来るのはこれくらいの仕事。
ちらほら返って来る挨拶に感情なんてなくて、
全員BOTのよう。
「渡辺さん、今日１レーン人手ないから午前お願いしてもいい？」
『あ、はい、全然』
昇給も昇格もない
微々たるボーナスと生きる為に必要な分の手取り
余った金は全部貯金に回して贅沢はしない、
贅沢など俺はしていいものじゃないだろう。
こんな社畜に溺れた生活をしているのも、
何もかも名前だけで
日本の半数以上の人を不快にさせたアイツのせいだ。
毎日毎日、そんな怨念を抱えながら生きている。
6年前の今日、この事故が起きた日から
俺の人生は大暴落した。
朝行ってきますと出て行く時
帰宅したら姉夫婦がいると知って、
姪に会いたかった俺はるんるんで講義を受けた。
夜ただいまと戻った時には、家族に笑顔がなかった。
「おかえりなさい」と出迎えてくれた義兄さんも、
姪っ子を抱いた姉貴も笑っていなかった。
リビングに入ると父さん1人が無言で俯いていた。
『母さんは？』
俺の一言の返答で全てを知った。
その瞬間に崩れ落ちた俺の人生に
塩を塗り込むように世間は顔色を変えた。
俺が何かやらかしたわけじゃない。寧ろ真面目な方だ。
姉貴と小さい頃ふざけていて家の窓ガラスを割ったり、
度胸試しだと遊泳禁止の川に入って
溺れかけたりした事はあったけどそれだけ。
10年以上前の話。
父さんにゲンコツぶたれたり、
母さんにこっぴどく叱られたりしたけれど
それも10年以上前の話。
ここ最近は勉学においても褒められて、
大学に行くことも認めてもらえて
お金を出してもらっている。
感謝してるし、たまに親孝行だってしてる。
『なんで俺らがって思うだろ』
「…血は繋がってるから」
『でも悪いの本人だろ？母さんの忠告もじいじもばあばのことも無視してさ！？』
「とにかく。今は、反抗しちゃダメ」
『姉貴はそれでいいのかよ』
「……自分の子供守ると思えばね」
遠くで遊んでいた姪っ子の彩春がこちらに大きく手を振る
「まだ3歳のあの子を大人の事情に巻き込みたくない」
姉貴の悲壮に満ちた顔が
今も脳裏に焼きついて離れてくれない。
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chirua(プロフ) - ！さん» ご感想頂きありがとうございます、とても嬉しく光栄です。今後ともどうぞよろしくお願いします (11月3日 16時) (
レス) id: 9ab6ec17b9 (このIDを非表示/違反報告)
！(プロフ) - 久しぶりにこのサイトでとても引きこまれる作品を読みました。彼が少しでも幸せだなと思える日が来ることを願っています。次回も楽しみにしております。 (11月2日 23時) (レス) id: 50e233f32f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：chirua | 作成日時：2023年10月10日 17時
