紅色キミサワー

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ありがとうございました〜




……






『ただいま…』







静まり返った自宅に今日も1人、いや2人か。



適当に買い漁ったご飯を冷蔵庫に入れて、


見たくもないテレビをBGM代わりに流す。




明日は警察に行って病院行かなければ。



棚に置いた小物入れの2段目の引き出しから診察券と


手帳を取り出す。







『お腹すいたよね……』







少しだけ膨らんだお腹を撫でながら苦し紛れに呟く。







『明日パパのところに行くからね、』







あの日あの後、体調が急激に悪化して戻し、


事情聴取という訳にも行かなくなり


受診した病院で妊娠8週目と言われた。





ここまで気が付かなかったのは、


気が張っていたからだろうと。





正直迷った。



もしかしたらこれから容疑者となる人の


子供を産むことになるのではないかと。



私は第1発見者としてまだ沢山聞かれることがあって、


話さなきゃいけないことがあって参っているけど、


どれもこれも


亮平くんから課せられた難題なのかと下を向く。





辰哉くんに初めて面会して伝えた時は


号泣しながら頭を下げられた。



選択の余地はあると両親から散々言われてしまったけれど、


現在5ヶ月。この子自身にひとつも罪は無い。





彼はあの後、


暫く昏睡状態を保っていたが間もなく骨と灰になった。



容疑は殺人未遂から殺人に変わって、



裁判の準備が進められている。





私は直接見たわけじゃないからどちらに着くことも、


今はまだ許されない。



今はただ、この子が健康に育ってくれる事を


祈って生きるだけ。







『来たよ』

「体調、平気？」

『初めてだから分からないけど、今は大分落ち着いてるって』







憔悴した様子の彼が板1枚向こうの世界で虚しそうに呟く。




月2回だけ許された面会の度に


辰哉くんはお腹見せてと頼んでくる。




私からするとそんな数週間じゃ


違いを実感出来ていないけれど、


本人からすると段々大きくなっていくお腹が


成長を感じられて嬉しいと。





大学の時も卒業したあとも、


道で子供と目が合うとニコニコで手を振ったり


公園に行けばいつの間にか遊び相手になっちゃったりして


微笑ましかった。





こんな形じゃなければ


待望の子だと乱舞していたのだろうか。





多分私も、今よりもっと喜んでいたと思う。

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