- ページ24
-
『え…たつ、やくん……?』
「A………A!!」
ナイフの転がる乾いた音が響いた後、
ずっと望んでいた辰哉くんの温もりに包まれる。
好きな香水の香りと柔軟剤の香り、
そして鉄の匂い。
視界の隅に捕える彼の周りにできる血溜まり。
「怪我は!?逃げよう!」
『なにもっ……何も無いよ、』
「え?」
『手……』
赤く染った手を見つめたまま
フリーズしてしまった辰哉くんを見て
嘲笑う亮平くんの微かな声が聞こえてくる。
『どういう事……ねえ、』
「恋人を、殺す……誰も、っ…ふっかとは、言ってない」
息を荒くする亮平くんの言葉でハッとする。
また気が付けていなかったことがある、と。
彼女契約はまだ終わっていない、という事は
殺される"恋人"は
『亮平くん…最初からそのつもりなの……』
「もっとさ、人に……干渉しなよ」
不意に伸ばした手を握られて鳥肌が立つ。
生暖かく、力の入らない手。
それ以降まともな記憶がない。咄嗟に救急車を呼んだ。
刺したと言ったからか警察も来て、
強制的に辰哉くんが取り押さえられていた。
違うと抵抗しても、
亮平くんがいつの間にか目を閉じて
横たわっている状況は何も変わらなくて、
抱き締められた私に血液がついていることも変わらなくて、
なにも、
分からなくて。
分かりたくない。
なんでどうして?
全部私のせい?
『うっ……おえっ……』
171人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
chirua(プロフ) - らんさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます;;完結まで是非よろしくお願いします︎☺︎ (9月6日 16時) (レス) id: 9ab6ec17b9 (このIDを非表示/違反報告)
らん - めちゃくちゃ面白いです!阿部くん最高すぎます!更新楽しみにしてます☺️ (9月2日 1時) (レス) id: 07ae00cca1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:chirua | 作成日時:2023年8月30日 13時