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肩を掴んで向かい合わせにされ、

手に持っていたグラスまで取り上げられる。

しんとした二次会の会場に

辰哉くんの息を吸い込む音だけが静かに聞こえた。

「Aちゃん」

「俺と、結婚してくれませんか」

けっこん……？

目の前に差し出されたテレビで見るような宝石のついた指輪。

反射する光が眩しいはずなのに目が離せない。

心臓の音がうるさい。

『あ…え、と…なんて言うんだっけ、こういう時……』

「んは、俺に聞かないの」

『……よろしく、お願いします』

深々と頭を下げると、

視線を感じていた方向から指笛や拍手が聞こえてきた。

「式の予行練習ね」

そう言いながらサイズがぴったりな指輪が薬指に収まる。

私の指にあっても尚美しく輝いていた。

『本当に、私で……』

「Aちゃんがいーの。もう俺の奥さんなんだから
こーじと無駄に仲良くしないこと」

『ん……なんで康二くん？』

「ふっかさんすーぐ嫉妬するんよ〜」

奥さんと仲良く手をつなぐ康二くんからのヤジに

余計な事を言うなと顔を赤らめる辰哉くんを見て

緊張の糸が解れてやっと笑えた。

そしてやっと見れたふたりの多数の友人、

新婦側のご友人からも祝福を受けた。