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灯台もと暗しページ25

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Aさんこれ部数足りない！

Aさんメール送ってくれた？

今日会議やるよー！！

『はあ……ミスしまくった……』

「誰にでもミスはある、気にせえへんのよ」

『でも康二くんにめっちゃ迷惑かけてしまって……』

「いつものパソコンの借り返したって事にしとこ！」

深澤さんとお付き合いしてから

丁度一年になるはずだった日。

仕事でミスを連発して、注意されて、

康二くんにまで濡れ衣を化した。

パソコンの借りと言っても、

入社一年半過ぎた頃から私に聞かなくとも

スラスラ操作できるようになっていて、

全く教えた記憶がない。

この後彼女とご飯！！と張り切って退勤していった

康二くんを尻目にとぼとぼ駅に向かって歩いて行く。

やっぱり陰の人間は陰で生きてる方がむいてる。

「ねえ、お姉さん」

駅の階段を一段踏んだ所で

聞き覚えのない声が目の前でして、恐る恐る顔を上げる。

『……え、？』

なんかどこかで……見たような、えっと、誰だっけこの人

「渡辺です」

『あの、どこかで……？』

「……翔太です」

『すみません名前言われても……わか、あっ！』

過去に見た記憶の奥底にねじ込まれて写真が

手前にバシーンっと音を立ててせり出てきた。

深澤さんの弟さんだ。

『深澤さんの……』

「そう、辰哉の弟。別れたんでしょ？」

『なんで知って……というか何の用でしょうか』

今深澤さんとですら距離を保っているのに

なんだって弟が私なんかに用があるんだ。

頭の先から足先まで眺めた後に

「やっぱ不釣り合いなんだな」

腹が立つというか悲しいというか。

(一応)初対面で分かりきっていることを

わざわざ言ってくる男に呆れて無言のままホームに向かった。

それにしてもあまりよく似ているとは思えない弟さんだった。

渡辺って言ってたし、なんで名字違うんだろう。

子供の頃の写真ではちゃんと4人で写ってたけれど……

もう距離を置かないといけない人達なのに、

わざわざ目の前に現れたせいで気になることが増えてしまった。