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最後まで残していた艶のある栗を口に運んだ時、
深澤さんが置いていったスマホの画面が目に入る。
丁度LINEの通知が来たようで画面が付いていた。
相手は母親。見てはいけないと目を逸らしたが、
視界の隅に入った文字が頭を駆け巡って来て
思わず見つめてしまった。
写真一件とメッセージ二件。
"さっさと別れなさいよ。この子と"
"貴方と釣り合うとでも思ってるの?"
バリンっ。
心のどこか、もしくは、
頭のどこかでそう音を立ててバラバラに何かが砕けた。
硝子出て来ていた何かの破片は自分の中で散らばって、
他の場所までも傷付けた。
小さくて見づらいけれど、写真は私達の後ろ姿に見えた。
その後もブーっ、ブーっ、と音を鳴らしながら
何件もメッセージが来ていたようだった。
それ以上は見なかった。見れなかった。
本来は見てはいけなかったのだから当たり前だ。
恋愛経験が浅い私はすぐ将来の事まで考えてしまうときがある。
彼との将来を、少しばかり夢見たことだって無いわけではない。
でも、その将来に出てくるはずの彼の母から
この言われようなんて。
呑気に過ごしている自分が嫌になった。
噛み締めていた栗が口の中で苦味を帯びたのを
私は深く呑み込んだ。
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作者名:chirua | 作成日時:2023年3月1日 17時