cigar- （２） (ページ8)

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『俺だけなら待たなくて良くね？』

「ちゃんと断ったよ…！でもそれでもいいって……いつかはとか言われて……」

『だからずるずる関係続けてますって？俺がいんのに』

「最近変だよ、落ち着いてって」

『だったらハッキリ言ってくれよ、そいつとは関わらない、俺しか好きじゃない俺だけだって』

壁にまで追いやって誘導尋問のように言葉を投げつける。

視線を逸らしたまま面倒くさそうな顔をしている

「離してっ！！」

突然の抵抗に力が分散する。

でもここで離したらAは

そいつの元に行ってしまうかもしれない、

もしかしたらこの近くで待ち伏せしている阿部に

連れていかれるかもしれない。

俺のものじゃ、なくなるかもしれない

それに今力を弱めたら、そう思った時にはもう遅く、

揉み合った挙句に力の差がある彼女の身体が飛んで行った。

「いっ…」

随分な倒れ込む音がしてハッとした。

大切にしている、していたはずの彼女が

床に倒れ込んで顔を歪めている。

着ている白のブラウスに滲んで行く赤

じわじわと範囲が広がっていく

力を弱めればAがバランスを崩して倒れてしまう。

気が付いていたはずなのに気を回せなかった。

『や…ごめ、止血……』

棚にしまってあるタオルを2、3枚わしずかみにして戻ると

無言のまま奪い取られた。

何度同じことを繰り返せば気が済むのだろう、

自分が変と言うことも、

彼女に変と言われている意味も理解しているはずなのに

"ふっかは分かってて繰り返すタイプでしょ"

"もしかしたら次は変わるかもって思って繰り返してるんじゃない？"

阿部の言う通りだと思った。

俺は分かっていて何度も間違いを繰り返す

間違いを利用して何かを変えようとしてしまっている、

何も変わらないのに。

必死に止血するAを前に

タオルを持ってくる事と謝る事しか出来なかった。