cigar- （２） (ページ7)

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「あれ辰哉くん、今日こっち帰ってきたの？」

『だめ？』

「ううん、全然。久しぶりな感じするね」

先に帰宅した彼女の後を追うように

知らないフリをして帰ってきた。

部屋を見渡すけど、

配置が変わったり何か増えていたりはしていない。

「辰哉くん？」

『…さっきの男、随分親しげだったじゃん』

「さっきの…って？」

『駅前でカップルみたいに。誰かと会う時は伝えてって言ったじゃん』

今の今までにこやかだった彼女が

狐につままれたような顔をする。

さっきの男が触った肩を強めに掴む

『触ってたじゃん、馴れ馴れしくさ』

「あ……違うよ」

『何でいっつも違う違うって……何が？なんも違くねぇって……』

彼女の事を深く愛せるのは俺以外に居ない、

阿部にだってあの男にだって出来ない。

奪われることもさせてたまるものか。

それなのにどいつもこいつも俺の気持ちを逆撫でしてくる

言いたいこともうまく言えなくなって

頭を抱えながらへたり込む。

何やってんだろ、自分。

「あの人はそんなじゃなくて、その……一方的に、好意持たれてるだけ…で」

「ちゃんと断ったんだけど……」

だけど。断ったんだけど。

だけどって何。

今まで隠したり、耐えたりして

心のどこかでぴんと張っていた糸が

ブチッと音を立てて切れた。いや、ちぎれた

『今好きなの誰、今Aの心にいるのは誰？俺？ねえ』

「ま、まって」

両手に有り余る力で腕を掴む。

彼女を、Aをどこにも行かせたくない。

どこにも行かないと言ってくれ