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間髪入れずに返ってきた返答に耳を疑う。
真っ黒な眼は微動だにしない。
こいつまだAの事……
『俺だって大切に』
「……Aの事毎日のように泣かせる挙句自分は他の女と？大切にしてるなんて大嘘。俺に誓ったところで誰も見てなければこんな事してもいいって？」
阿部は前会った時に既に証拠を持ってきていた。
でも、俺を泳がす為にわざと出さずに、
確証を持たせれる動画という証拠とともに今日来た。
触らぬ神に祟りなし
あいつが言っていたことの意味がやっと分かる。
『……いつからこの事』
「本当にたまたまだよ。女の人と歩くふっかを見かけて、卒業してからの事謝ろうと思って近付いたの。それが、この最初の写真」
『……』
「最初は何かの間違いだろうって思った。でも、それから何度も見かけるし挙句にふっかは、嘘をついた」
もう二度と大学の頃のような俺らには、
軽音部の5人には戻れない。
微かに見せる後悔に満ちた表情が、
Aと付き合う事を阿部に報告した時の表情と重なった。
「煙草吸ってるんだね」
『……もう吸わねぇよ。もう吸わないし会いに行かねぇし』
「覆水盆に返らず」
『あ…？』
「今度はちゃんとAを迎えに行く」
iPadのカバーを閉じかけたところを押さえつける
『待てって、ほんとに』
「あの時ふっかに先手を譲った俺が本当にバカだった。両思いだって思い込んで安心しきってた、けどそんなの妄想に過ぎなかった。もしあの時、俺が先に気持ち伝えてたらこんな事にならなかったんだよ」
俺を振り払い鞄ににしまわれるiPadの脇に
鎮座しているパソコンが少しだけ見えた。
テーブルには出さなかったけど、まだなにか…
「奪われたから、奪い返す」
『らしくねえよ、お前何言ってんのか分かっ』
「お前こそ自分が何してんのか分かってんのかよ」
聞いたこと無かった、阿部の乱暴な言葉遣い。
1番敵に回しては行けない人間を、俺は敵に回した。
それ以上は何も言わずにその場を立ち去る阿部を
追いかけることができなかった。
何から先に対処したらいいのか、
これから何をしようとしてるのか考えることが出来なくて
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作者名：chirua | 作成日時：2024年3月18日 16時
