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阿部との約束の日。
Aに伝えてから出掛けるつもりだったけれど、
仕事の関係上自分の部屋から出勤するらしく
久々に1人で自分の部屋から外出する。
次会った時にでも話せばいい、
康二達もいればきっと思い出話も出来るだろうそう思った。
けれど、そんなの幻想に過ぎなかった。
以前のように食事を終えたあと、徐にテーブルの上へ
革のカバーに包まれたiPadを出してきた。
前気になっていた真っ黒な鞄から。
「わざわざ言わなくても、ふっかなら分かるよね？」
慣れた手つきで開かれたアルバムフォルダに
視線を落とすと、
刺々しい阿部の低い声が飛んできた。
スライドをすればする度に何枚も、
何十枚も出てくる俺の写真。
「まさか横の女はAだなんて言わないでね」
『……なんで、これ』
「なんで？見かけたから、何度も」
盗撮した事"だけ"は謝るよと言われたけれど、
そこに対してとやかく言える筋合いは無い
睨み付けるように阿部を見ると、
鋭い三白眼もこちらを睨み付けるように見ていて
先に視線を逸らす。
視線を逸らした先にあるiPadに映し出される画像は俺と、
もう忘却の彼方になっている女性、
そしてあの女との写真。
腕を組んで歩いているところや、ホテルへ入る瞬間まで。
目深に被った帽子は何も意味を成していない
「前証拠もなしに疑うなって言ったから。持ってきたよ？浮気の証拠」
『んな事聞いてねえよ……』
「反省したかと思ったのに」
呆然とする俺を前に再び画面をスライドする。
そこにあったのはベランダで煙草を吸う俺に
背後から腕を回すあの女の動画。
わざわざ日付まで表示させている。
『あいつ……』
「協力してもらった」
はめられた……？
その姿が得意げに見えて、怒りが湧く。
そもそもお前がこんなことをしなければ
『つーか、なんで阿部ちゃんが首突っ込むのよ』
「Aが好きだから」
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作者名：chirua | 作成日時：2024年3月18日 16時
