cigar- （２） (ページ3)

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「大丈夫だよ。……誰にも見られてないから」

首元に振り撒かれた

いつもとは違う香りのする香水が鼻を掠めていく。

耳元で囁いた女の声が全身を巡った。

誰にも見られていない、もしかしたらこいつは

阿部のことを知っているのかもしれない。

あの時理由もなく接触してきたのも

何かを企んでやった事なのか？

襲うまがいの事をしたあの時以来触れていなかった

女性の唇に心が強く揺らいだ。

所詮男などこんなものかもしれない

「彼女の前では吸わないの？」

『吸わないねえ』

「でも私の前では吸うんだ？」

『……お前に限った話じゃない』

いつかのルーティンと化した

煙草を吸う行為を久しぶりにする。

ずっと吸っていなかったからか、とても強く感じる。

ベランダから外を眺めるのもいつぶりだろう

「ちゃんと彼女さんともしないと」

『してるし、余計なお世話』

「嘘だ、こんなに乱暴されたの初めてだもん」

『わりいって、もう出るぞ』

まだ少し残っている煙草を灰皿に押し付けて部屋を後にする

金は払っておくと言って女を先にホテルから出した。

1人でも見られたらまずいのに

2人で出ていったところを見られるのなんて余計にまずい。

放置していたスマホを付けると

まだ彼女からの連絡は無く、

家に戻っていないことを確認する。

以前まで楽だと思っていたはずの関係が、

今回に限っては多少の罪悪感が膨れる。

でももう最後にしなくちゃいけない

コソコソ出たホテル街を抜けた先にあったゴミ箱に

まだ数本残っている煙草とライター、

さっき返されたライター諸共全てゴミ箱へと捨てて帰った。