cigar- （２） (ページ15)

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俺が愛してない？

寧ろ俺以外の誰がAを愛せるというのか教えて欲しい。

阿部にできっこないだろ

誰にも渡したくない、誰にも見られたくない、

俺だけのものであって欲しい、俺だけの……

自分の無力さと言葉に腹が立ち頭を掻き乱す。

あるわけない証拠を探して盗聴器を探すために見た場所を

今度は荒らすようにして物を漁る。

棚に入っているもので俺が気が付いてないだけで

証拠となるものがあるかもしれない、

ソファーの下にカメラでもあったかもしれない、

下駄箱に他の見慣れない靴が入っていたかもしれない、

郵便受けにも盗聴器以外になにか。

そう思ってさっきより入念に見ると

隅の方に2つ何かあるのが見えた。

1度呼吸を整えて慎重に取り出すと煙草とライター

それもあの女と最後に会った日にゴミ箱に捨てたはずの。

把握してるのと変わらない本数がそのまま入っていた。

そのままその場にへたり込み、

身体に染み付いてしまった流れ作業の動作で

煙草を加えてライターの火をつける。

『っ、ゴホッ…まじい……』

…付き合ってから好きって言ったこと、あったかな

荒れた部屋に漂う煙。止まらぬ涙に染みて目が痛い。

あんなに気持ちよく吸えたこの煙草ですら、

今は不味くて臭くて気持ち悪い。

俺が大切にしていたものって……

ピコン

「'無事帰った？'」

「'ふっかさん、ごめんな'」

……

…………

「'無事帰った？'」

「'康二がメッセージの送信を取り消しました'」