cigar- （２） (ページ14)

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まさに負の連鎖で感情すらも追いつかない。

力の入らない手を必死に動かして、

開いていた彼女とのトーク画面を閉じて

別のトーク画面から電話をかける。

予想外にもそいつは2コール目で出る

『阿部お前か』

「'…なにが？'」

『Aが居なくなったのも、GPSも盗聴器も。犯罪だろ』

「'まってよどうしたのふっか、なんの事？'」

シラを切るつもりなのか俺の質問にはひとつも答えない

でも声色にどこか鋭さを感じる。

『Aを返せ』

「'いないの？'」

『連れてったんだろ、とぼけんなよ』

「'証拠もなしに疑わないでよ'」

いつか俺が言ったそのセリフが

ブーメランの如く己の元へ帰ってきた。

その後に乾いた笑いが

電話越しに聞こえてきて歯を食いしばった

『お前……』

「'もし俺がAを連れて行ったとして、それはAの判断だって考えることはしないの？'」

『んな事……するわけねぇだろ』

「'どうだろう、実際今Aは部屋にいなかった。だから俺に電話をしてきた、違う？'」

『奪うとかなんとか脅しといてよくそんなこと言えるよな』

「'はあーーー'」

耳からスマホを離しても聞こえるくらいの音量で

ため息を付く。

「'だったら俺みたいに証拠提示してみなよ'」

身勝手でした浮気が阿部にバレて、

その場しのぎの嘘もバレて脅されて、

住所も家での会話も筒抜けで、挙句に彼女は攫われて。

でも彼女を攫われたという証拠が、

写真も動画も音声も何も無い。

寧ろ出ていく原因と理由の方があるくらいで。

返す言葉もなく黙っていると、それと…と聞こえてくる声

「'ふっかはAを愛してない'」

それだけ言うとブチッと音を立てて電話が切れた。