cigar- （２） (ページ13)

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『ただいま〜』

いつも通りを装って帰宅する。

いつもなら直ぐ帰ってくる返事が今日はなくて、

再び昨日したことを反省しながらリビングへと向かう

『……A？』

やっぱりまだ許しを得れていなかったと

恐る恐る扉を開けるとそこに彼女の姿は無く、

煌々と部屋を灯す電気と晩御飯の支度が

テーブルの上に置かれたまま静まり返っていた。

寝室も風呂場もベランダも見たけれど姿はなく、

身の回りの荷物だけが無くなっているのに気がついた。

この部屋の鍵と、スマホと財布。

そしていつも使っているカバン。スニーカーも。

どっと不安が押し寄せてきて電話をかける。

何度もかけて、かけながら今一度部屋を見渡すけれど

どこにも居なくて音沙汰無し。

名前を呼んでも返事は無い。

『なんで』

"ちゃんと話してくるね"

信じてはいけない言葉だったのか、

彼女が腹いせに俺に着いた嘘なのか。

それとも…

廊下に無造作に置いた鞄の中から

財布を取りだして例のものを手に取る。

『位置情報…』

最後に会った時の阿部の声が頭の中でうるさく木霊する

阿部に連れていかれた。

その考えで頭がいっぱいになった。

咄嗟に棚の裏、コンセント、ソファーの下、下駄箱、

他にもいろんな場所を見たあと郵便受け入れに手を入れる。

探していたものは呆気なく手に触れた

『きちぃって……』

ドラマなんかでよく見るような

手のひらに収まる小さな物体。

赤いランプが点灯していて、

これが盗聴器だと気がつくのに時間いらなかった。