cigar- （２） (ページ11)

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職場に戻るなり財布の中を漁った。

小銭入れ、カード収納ひとつひとつ、お札収納。

『まじであんじゃん……』

お札を入れている所の奥深くに押し込まれた小型のタグ。

見る限りGPSにしか見えず、

角の方を持ってまじまじと見つめる。

どうしようかと思ったが財布の元の位置に静かに戻した。

もし俺が気がついたとなれば

Aになにかしかねないと思ったから。

阿部と最初に会った時、御手洗に1度席を離れた。

財布やスマホはその時に

椅子の上に置いたままにしてしまった。

きっとあの時、財布の中にこのチップを仕込んで、

帰宅後の俺の滞在場所から部屋を割り出したのだろう。

心当たりと言えばもうこれしかない

石橋を叩いて渡っていたはずが、

全て阿部の思惑通りに動かされていた。

ここまで来て俺は

どれだけ"友人"に怨みを持たれているのかを自覚した。

「深澤？」

『すみません、今行きます』

上司から呼ばれて慌ててロッカーを閉める。

最初から俺に猶予などなく、

彼女を迎えに行くと考えを固めて接触してきた。本気だ。

午後の業務は半分頭が機能してなくて、

周りから見て変に見えないように動くのでやっとだった。

30分程の残業を終えて彼女からのLINEに既読だけつける。

返事をしようと思ったけれど、その時間さえもおしくて

とにかく早く帰らなければと駆け足で駅まで向かう。

この時間ならギリギリ3分後の電車に間に合うはず。

「ふっかさん！」