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頭の中では何度も言えていたはずの言葉が
喉の奥でつっかえてなかなか出てこない。
蓮くんを待たせているからと
大きく息を吸うけどさっきみたいには落ち着けない
「うん」
少しテンポの遅れた返事を聞いて、やっと
『好きです……良ければ付き合ってくれませんか……』
みっともないくらい震えた声で、
伝えたかったことを必死に声に出した。
自分の言っている事だと
頭で理解できないくらいには緊張していた
下げた頭の先で少しだけ足音が聞こえたあと、
再び静寂に包まれた。
「……もちろん」
聞き慣れてきた優しい声が、
聞きたかった返事で返ってくる。
咄嗟に顔を上げるととても朗らかに笑っていた。
夢だと錯覚してしまうくらい頭がクラクラして、
それでもって嬉しくて。
『えっ、ほんとに？』
「うん本当に。……でも」
乱れていたのか私の髪を手ぐしで整えてから
「卒業してから俺から言わせて欲しい、だめ？」
上手く出ない声の代わりに必死に首を横に振る
「んはははっ、可愛い」
『……え、今…かわ』
「あ〜。言っちゃった」
『もう、もう1回だけ…言って』
「ん？やだ」
『お願いお願い、え、可愛いって言ったよね』
「わかんない、何？」
緊張が解けたせいかいつもは使わないような口調が出る。
けど、もうそれでいい。
夏祭りの時に疎かにしてしまった思いを
どこかで素直に伝えたくて仕方なかった。
3年間ずっと思い続けていた事を口にして伝えたかった、
それがやっと自分から1歩踏み出して伝えることが出来た。
彼から、蓮くんの口から
蓮くんの気持ちを直接聞ける日まで後ちょっとだけ、
片思いをしようと思う。
今は彼のワガママさえも受け入れていたいと思うから。
「休み中時間ある？」
『あるよ』
「どこか行かない？高校生の思い出作り」
『うん、行きたい！』
青春を閉じ込めていた宝箱は、
恋の魔法箱へとすっかり変身を遂げた。
卒業後にもっと華やかに煌めくと信じて。
いつも見上げる私といつも見下ろす蓮くん。
その彼の元にあと3センチだけ、近付きたい。
end.
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作者名：chirua | 作成日時：2023年12月20日 17時
