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何分返事に渋っていたかよく覚えていない。
そわそわして部屋をぐるぐる徘徊したり、
一度LINEを閉じてみたり。
『"久しぶりに通話したい"』
『"って言うAちゃんの心の叫びが聞こえたけど、どう？"』
再び来たメッセージは心の内を完全に読まれていた。
きっと思っていることが見え見えなのだろう。
覚束ない手で「"通話したい、"」「"あたってる"」
と返信すればすぐさま電話がかかってきて、
ひと呼吸おいてから出た。
『Aちゃん？久しぶりだね』
「…っ、うん。…寂しい」
『え、？なんて言った？』
「寂しいよ…会いたい」
久しぶりに聴けた彼の声に思わず今まで耐えていたものが身体の奥底から溢れ出して来た。
仕事熱心な彼を困らせてしまうかもという感情より先に
哀の気持ちが膨らんで、
弾けた。
纏まらない話を只管した気がするけど、
れんくんが『うん、うん』と相槌を打っていてくれた事しか覚えてない。
「っ…ごめん、つい寂しかったから…」
『いいよ、こっちこそ会えるって言ったのにごめんね』
「早く…帰ってきてほしい」
『そんなAちゃんに朗報です。来月からはそっちの仕事場に戻るよ』
「え…ほんと、？ほんとに？」
『本当に。また一緒に暮らせるから安心して』
『だからあと少しだけ、待ってて』
「うん」
通話は20分程度だったけど少しだけ気持ちが楽になって、
ホッとした。
通話中にふと雑音が目立って聞こえる気がした。
多分家からじゃなくて、
車の中で話してくれていたんだと思う。
きっと定時で終わりじゃなくて、
上司とかと外に出ていたのかもしれない。
それでもたった一個のメッセージだけで
ここまで安心させてくれた。
そんな彼の帰りを精一杯待とうと思った。
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作者名：chirua | 作成日時：2022年5月28日 23時
