【募集企画】仮想世界戦争【#コンパス】3 (ページ32)

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121.矛盾には気づかずページ32

「お隣いいかしら？」

シフトを組み直しているとしぃさんが声をかけてきた
首を縦に振る

「ノマはどこに行ったのかしら？文句の一つでも言ってやろうと思ってたのに」

「ノマさんなら個室を借りて仕事してますよ」

「あら、意外ね。ノマの事だから会社のことなんてどうでもいいと思ってそうなのに」

失礼だけどそれはわかる
しかしまぁ、職を失うかもしれないから面倒でもしているのかもしれない

「白ちゃんもノマも大変ねぇ。アタシのほうもてんやわんやよ。せっかく予約してくれてたのに申し訳ないわぁ…」

「昨日からあれだけの大騒ぎなのに、なんで服なんて買いに来るんでしょうね」

相変わらずねぇ、と言われるが本当のことだ
国が何とかしてくれると思ってる

「でも驚いたわぁ。若い子ばっかりなのね。二十代なんてアタシ達くらいなんじゃないかしら」

「ノマさんとしぃさんはあと2年で三十路ですしね」

「現実を突きつけないでちょうだい！…あら？」

しぃさんの視線が1人の女の子で止まる
私と同じ髪色、髪型の女の子
口元に黒子がある

「お知り合いですか？」

「ええ、私が働いてる美容院によく来てくれる子よぉ。ちょっと行ってくるわね！」

楽しそうに言うと有言実行
さっそく女の子のほうに歩いていった

シフトの組み直しは半分くらい終わった
少し休憩しようと思い、コーヒーを一口

周りを観察していると、自身のアバターに声をかけている子がいる
アバターに声をかけると開き直ったように端末を弄りだした
そのまま観察し続けていると少し口が弧を描く
立ち上がり、しぃさんと仲良くなっていた男の子の元に駆け寄っていった

何か良からぬことを考えているんだろうなと思う
私には関係ないけど

理解できない
なぜ人のことを詮索したがるのか
他人のことを知って何になるのか
何かを知って、それが自分の利益になることでも疲れるだけだろう
あの子も、あの子も

無関心が一番楽だと思うのに
他人と自分は違うもの
血の繋がりもない、ただの他人

誰かのために、自分のために
どっちかで動けと言われれば私は自分のために動く
誰かのために動いて損をしてしまえば勿体ない
まぁ、自分のために動いても損をする時はするけど

名ばかりの善意よりも、自己の損益のほうが大事だろう

「…すみません、お手洗いってどこにありますか？」

ひとりのほうが楽でいいのに