【募集企画】仮想世界戦争【#コンパス】 (ページ15)

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11.リソースとデリートページ15

仮想現実なんて言葉で済ませられるくらいここは小規模なものではないけれど、誰とでも繋がれるようでここでは誰とも繋がれない。

いつから私がそれを手にしていたかは覚えていない。皆が当然のようにそれを持っていたから私は持たされた、それだけだった。今思えば国連がこんなものに協力した時点で意味不明だ。いかに厳重なパスワードも世界レベルのクラッカーが100人も集まれば解けてしまうだろうに。しかしながら人間は効率を求める生き物ですべてが仮想世界で済ますことができる#コンパスは爆発的に普及してしまった。故に、このシステムがハックされたと聞いたときはいつか起きることが今起きたか程度の気分だったのだ。

友人の好機の目が痛くて誰もいなかった講義室へ逃げ込んでイヤホンをつける。Loadingの文字が点滅し始めてバグらしいな、なんて感想が先に出た。

そして視界が開け、天井が広がり、噴水が見え、見慣れたラウンジの風景が構築されーーー崩壊した。

「は？」

思わず声を上げてしまったのだが画面にノイズが入り始める。噴水の水の色がノイズとともに紫に変更されている。

(バグがここまで進行しているとなるとこのエリアに私のアバターをおいておくと相手側に情報が回るんじゃないか、いやそもそもハックされ出るならすでに回って)

思考が回り始める中揺れる画面に白い影が現れた。それは少しずつ解像度を上げていく。白いフォルムにコバルトの瞳、自称#コンパスを管理する、AIロボット・・・

「Voidoll・・・」

世界一有名なこのキャラクターは#コンパスを管理しているとされるAIだ。愛嬌のある態度で愛されているとは聞くけれど一部では不評らしい。私も不評の人間の一人だ、管理AIなんて名ばかりでどうせ人間が最終決定しているのだろうし萌系ロボにした理由がわからない。シンプルな棒人間みたいなやつで良かったと思う。

「カピッ！！！！深川まといさんですね、ラウンジに来てくださってありがとうございます。」

一応大事態であるはずなのだがいつもどおりの対応のVoidollに溜息が出た。まあアンドロイドにインターネット越しの人間の感情を学べというのは酷な話かもしれないけれど。

「Voidollじゃないか！あのメール、どういうことだい？」

見たところラウンジには私とVoidollの二人きりのようだった。単刀直入に深川まといらしく私が切り込むとVoidollは微妙な顔をする。

とりあえず会社とプログラマーはなにしてんだと心から私は思っていた。