【募集企画】仮想世界戦争【#コンパス】2 (ページ29)

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71.空虚と疑惑とページ29

私が#コンパスの部屋から抜けた時にちょうどスマホから電話のコールが鳴っていた。

パソコンの画面は#コンパスを開いたままだったが、スマホに表示された名前を見て、反射されたように電話に出た。

「もしもし。」

「もしもし、柊ちゃん？」

画面に表示されたのは"美空"の文字。

「うん。ねぇ、美空、これ一体どういうこと…？」

別に怒って問い詰めるつもりはなかった。
誰にでも隠し事の一つや二つはあると思う。
それを仲がいいから絶対に教えろとは全くもって思っていない。

ただ、昔から付き合いがあって、美空に「私の親友！」って笑顔で言われたことが何故か頭によぎってしまった。

なんだか、今までの積み上げてきた信頼というものが崩れていく音がした気がした。

それと同時に膨らんでいった疑惑という気持ち。

何が嫌なのか、何に対して怒っているのか、自分でもよく分からなかった。

「柊ちゃん、ごめんね。」

泣きそうな電話越しの声。

「……それは、何に対しての"ごめんね"なの？私に#コンパスのこと隠してたこと？それとも、私のことを信頼してなくてごめんねってこと？」

あぁ、私は別に怒ってないんだな。

妙に虚しくなっちゃったんだ。
信頼していたと思っていた人に大きな隠し事されて。
親友とか嘘だったのかなって。
私は色々相談してたし、美空のこと信頼してた。
けど、向こうは私が信頼するに足らない人でしかなかったってことかな？

かなりの沈黙だった。

「……ごめん、私、今はちょっと本社に行く気にはなれない。」

自分で言っておいて最低だと思った。
なんて感情的で、なんて自己中心的なんだろうと。

また言葉と言葉の合間に空白の沈黙が現れる。

私は何も言わずに彼女の返事を待った。

私は彼女に何を伝えたらいいのだろう。
そんなことを考えながら。