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中村 side
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咄嗟に予約したホテルに着いたのは0時を回る頃。部屋に入って、キャリーを放ってベッドに飛び込む。苦しそうな元太が脳裏に焼き付いて、一気に怖くなった。もっとなにか出来たはずなのに何も出来なくて、ただ立ち尽くすしかなくて。気づけばAに電話をかけていた。遅い時間のはずなのに、眠そうな声で出てくれたA。
｢海人？どうしたの？｣
『...なんか、暇だなって思って』
｢なに、それだけ？笑 私起こされたんだけど〜笑｣
『ごめん。ホテルって寂しいから誰かの声聞きたくなるんだよね』
｢そっか。じゃあ海人が寝るまで付き合ってあげる｣
『ありがとう』
そっからいつもみたいに他愛のない話をしたり、東京の出来事話したり。松倉くんのことも話した。...けど、未だ元太の話はできない。そう思っていた矢先、Aから元太の名前が出てきた。タイミング悪すぎるけど、Aと話すと必ず元太の名前出てくるから避けられないこと。
｢そうだ、元太くんと会った？｣
『あったよ。元太の家行った』
｢いいなー。綺麗だった？｣
『うん。都会の家って感じ』
｢私も近々東京行こうかな。お金ならあるし｣
『えー、今からだと寒くね？あと、女ひとりじゃ危ないよ』
｢またそういう。海人って変なところで過保護だよね｣
なるべく元太の話を聞かれても避けている自分に少し苦笑い。今すぐに元太のがんのことを言いたい。発作を見て、春まで持たないって直観的に思った。Aはもう元太に会えなくなるかもしれない。
『...ねえ、A』
｢ん？｣
『好きな人にはちゃんと好きって言いなね』
｢え、なに急に笑｣
『何となく思った。遅くなる前に言っといた方がいいなって。』
｢...そうだね〜後悔する前に行っといた方がいいよね。やっぱ私冬東京行こうかな｣
『それは違う、危ないからダメ』
俺はまだ、好きなんて言えそうにないな。笑
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作者名：夕 | 作成日時：2021年7月1日 21時
