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「お主、捨てられたのか?それとも家出か?」
こんな時間に外に出ると危ない、鬼が出るぞ。と二本の刀を腰に提げた女は俺を見下しながらそう言った。
これが俺と、師匠との出会い、今考えると実にまぁ滑稽で、情けない話である。
俺一人なら何とかできた、だが俺には嫁が三人いる。置いて逃げるなんて選択肢はハナからない俺は何度切っても死にそうにない目の前の化け物を見ていた。
せっかくあの家から逃げることが出来たのに、どうしてこんな所で。そう思った時、周りにまるで爆薬を投げた時のような音が鳴り響いた。
「__音の呼吸 壱ノ型 轟」
崖で波風に揺れるヒガンバナのような髪の毛が特徴的だった。次にこちらを見たのは髪の毛よりも深い深紅色をした吊り気味の瞳、真っ直ぐに伸びたまつ毛がその目付きの悪さを際立たせていた。
そして唇に濃く引かれた紅、まさに強い女、なによりもその腕の筋肉にはさすがの俺も驚いた。女の出せる力じゃねぇし、筋肉量じゃねぇだろそれ。
「無事かお主ら、こんな時間にここにいるのは馬鹿のみぞ」
「…ぁ、アンタは一体…」
「妾の名は
鬼殺隊の名に聞き覚えがあった。そうかこの女が殺したのは‘’鬼”と呼ばれる生き物か。忍びであった頃、風の噂で聞いたことがあったのだった。その噂を聞いた後すぐに訓練が始まったせいで忘れていたが、そんな話が確かに存在したのだ。
「俺も!俺もそこへ連れて行ってくれ!」
「…何を言うか、お主ら一般人であろう」
「俺は元忍だ、アンタの役にだって立てる!」
「……ほうか、まぁそれは後でいい、ひとまず着いてきんさい」
怪訝そうな顔をした女はそう言って俺の手を引っ張りあげ、立ち上がらせた。そしてそのままスタスタと歩く。妙なことにこの女からはひとつも音が聞こえやしなかった。
歩く音も、息遣いも、何もかもが静かな女だった。だと言うのにあの鬼を殺した技は俺が今まで見た何よりも派手で、何よりも美しかったと覚えている。
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パンナコッタ - すごく続きが気になります!更新頑張ってください! (2023年5月15日 2時) (レス) @page5 id: 3cc5d637ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Strawberry | 作成日時:2023年4月26日 22時