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◇
「見てご覧、カリファ」
私の可愛い子、とAはカリファの頭をそれはそれは優しく撫でながら静かに囁いた。
カリファはAの言う通り、きつく閉じていた目を開き、目の前の景色に驚き、ぽかんと口まで広げてしまった。
一面に広がる青に、そこへ溶け込む夕日と黄昏。日が落ちる少し前だったのだろう、まだ確かに太陽のあかりは残っているのに、真上には一等星が輝いていた。
「おねえさま、これは」
「ふふ、いつも頑張ってるあなたへのご褒美、この景色を知らないなんて勿体ないわ」
「る、ルッチにも…？」
ん？とAがカリファの言葉に首を傾げた。Aが弟であるルッチを溺愛しているというのは周知の事実であるし、もちろんカリファだって知らないはずがなかった。
だから気になったのだ、カリファはAが大好きで敬愛している、そんな対象が、自分に特別を見せてくれたのかと。
「ふふ、ルッチにも内緒の特別な時間よ。」
天啓、カリファはまるで雷にでも撃たれたかのような衝撃に襲われた。あの、弟思いのAが？何を持ってしても弟を一番とするAが、私みたいな子供に特別を？カリファはあまりの興奮から言葉を発することが出来なくなっていたのだ。
なにかを伝えたそうなカリファを見下ろし、Aは困ったように首を傾げてもう一度カリファの名前を呼んだ。
「いいこと？貴女は強いわ、私にも負けないくらい」
「おっ、おねえさま…」
「あんな子の言う事聞かなくていいの、貴女は素晴らしい子供なのだから」
すりすり、とAはまるで母親が我が子にするように優しくカリファの額にすり寄った。カリファもその愛を甘んじて受け止め、擽ったそうに目を細めて笑った。
そんなこと言われたのは初めてだし、そんなふうに思われていたのも初めて知ったのだ。
カリファは嬉しすぎて月歩までできる気分だった。正確にはまだ四式しか使えないのだけれど。私は強い、私はお姉様に認められるくらい強いんだ！
カリファはきゅ、と小さな手で握りこぶしを作りながら目を輝かせた。
「＿＿カリファ？」
「はっ、失礼しました。…少しだけ、あの時を思い出していて」
「姉さん、海ってなんのことだ」
「ふふ、カリファと私の、女の子だけの秘密よ」
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作者名：Strawberry | 作成日時：2023年3月12日 0時
