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◇
そうと決めたら頑固な姉だ、いつまで隠し通せるか分かりもしないが、ルッチは肩を竦めてAから目を逸らした。
スパンダムとはずる賢く、嫌に頭のいい男だ。Aが行方をくらませたあともそれとなくAの行方を追い、探し続けているのをルッチたちは知っている。
なんだかんだ、スパンダムはAに普通とは言えないほどの情と執着を見せていた。元CP9の連中全員が知っている周知の事実であろう。
しかし対するAはそのスパンダムから逃げ隠れるのに必死だ。
彼女が言うに、見つかれば息子が殺されてしまうとの事。ルッチはそうとは思わないが、Aは逆にそうなると信じて疑おうとしない。
ここの島も、そろそろ潮時だろうか。とAはため息をついて椅子に深く腰かけた。ルッチがいる日はルシアもテンションが高い、ルッチがつよいと分かっているのだろう。
「ママも、ママも！」
「ほらルシア、ルッチに迷惑かけちゃダメよ」
「迷惑なんかじゃないさ、姉さんに似て随分元気な子だな」
「……そう、かしら」
第一子はスパンダムに似なかった。顔の造形もA似似ていたし、そうだ、父親に似ているところと言えば髪の毛の色とくせ毛くらいだろう。Aは息子の後ろ姿に、想い人の姿を重ねた。
「じゃあ姉さん、俺はそろそろ行く」
「うん、態々寄ってくれてありがとうね」
「またね叔父さん！すぐ来てね！」
「おう、次は食いもんでも持ってきてやる」
あの殺戮兵器も甥っ子には優しいのか、とジャブラが腹を抱えて笑いそうな光景だ。しかしAからしたら幸せそのものを形作る景色であり、気が抜けたように笑っていた。
「あの時のガキ、Aに似てたな」
「…いきなりなんじゃ、懐かしい名を出しおって」
「いや、ルッチと任務で少し遠い島に行ったんだが…そこですれ違ったガキがAにしか見えなくて…」
「他人の空似じゃろう」
いや、そんなことはない。あれは完全にその血だった。
スパンダムは顎に手をやりながらカクの目を見つめた。どうやらこの喜劇は俺にだけ知らされずに行われているらしい、舌打ちが出そうになるのを何とかこらえ、目を細めた。
コイツら、顔に出やすすぎじゃないか、ルッチといいカクといい、隠し事が下手くそで仕方ない。
あの島、もう行き方も子供の向かった先も覚えている、あとはあの女に全てを吐かせるだけだ。
何故俺から逃げたのか、何故、逃げられると少しでも思ったのか。と
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作者名：Strawberry | 作成日時：2023年3月12日 0時
