最後はあなた ページ16
さっきの話の逆 カニバはないけど普通に片方が死ぬ
メリバ
◇
「おい！おいしっかりしろよ！お前がいて、どうしてこうなる…！！」
「スパンダム、さん…」
こふっ、と血が沸き上がり、口の周りが血に濡れる。
スパンダムは焦ってAの腹に空いた傷を塞ごうと、必死に止血をした。
「どうして、どうして！」
「ふ、ふふ……こわいかお、スパンダムさん」
「そりゃ…ッ、いいから、お前は生きることだけ考えてろよ…っ！」
「最後は、」
Aがスパンダムの声を遮り、そう言って微笑んだ。だんだんと目から光が消える、段々と、暖かな体温が消えていく。
「貴方に、殺されたい」
「ッ！！」
「お願い、します」
Aはこんな事態になることを想定していたのか、居なかったのか。ただの護身用としてか、スパンダムに短剣を渡していた
それはAのような屈強な兵器にも通用する、ベガパンク特性のナイフ。
スパンダムは自分の手が震えているのをやっと自覚し、目を見開いて血まみれの手のひらを見つめた。
「ずっと、お前だけを愛してる」
「私もよ、あなた」
深く深く、スパンダムの刺したナイフはAの心臓を貫いた。Aの口から血が溢れ出し、輝いていたはずの瞳から光が消える。
スパンダムの瞳からは一粒、涙がこぼれた。
ひとつ落ちればその後を伝って大粒の涙がこぼれ落ちる。その涙がAの血に混ざり、地面へと滴り落ちて行った。
スパンダムは泣いた、今までにないくらい、悔しくて歯を食いしばりながら、Aの真っ赤な血が消えるのを願って、静かに泣き続けた。
スパンダムがAの亡骸を抱えてルッチの前に現れた。ルッチは大きく目を見開き、スパンダムの手の中に眠るAを見つめる。
その顔は酷く穏やかで、幸せそうな顔だった。まるでただ眠っているだけのような、そんな顔。
「…姉さん、は」
「死んだ、死んだよ。もう帰ってこない」
「ッ！！何故？！お前が采配をしたはずなのに…！！」
「…は、ハハハ…！随分と汚ぇネズミが…ここに紛れ込んだようだなァ？…ルッチィ」
びく、とルッチが肩を揺らして目の前の男を見た。瞳孔が開き、額に青筋をうかべた、かつてあの座に座っていた時の、あのオトコの姿。
「…えぇ、そのようですね」
この男が作戦を間違えたことなど、今までに一度もなかった。しかしそれはこの男が上に立っていた時、つまりこの男が最高権力だった時だ。
だが今はどうだ？ここでの最高権力者はルッチだが、それも世界政府直下のものだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 86人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Strawberry | 作成日時：2023年3月12日 0時
