阿吽 ページ11
CP9の時
◇
「A」
「…いい加減自分でやったら？」
ジャブラにしては珍しくしっかりとスーツを着込み、Aを探していた。そしてやっと見つけた先には呆れた顔でジャブラを睨むA。ジャブラの手に持たれていたのは何度Aに結ばせたかさえ分からないネクタイだった。
呆れ顔をしながらも、少しだけ背伸びをしたAがジャブラの首にネクタイを巻き、きゅっと結びつけた。そうして真っ直ぐになったのを確認してからAはジャブラから離れる。
「はい、今日も男前ね」
「いっつも言ってて飽きねぇのかよ？」
「飽きないわよ、ホントのことでしょ」
顔に傷がついた日も、Aはジャブラにそう言ったことがある。箔がついたと思ったのはジャブラとて同じだ、めずらしくなんの意味もなく、ただ単純に自分を褒めたAに罰が悪くなったのも、昨日の事のように思い出せる。
「それに、長官の顔に泥を塗る訳には行かないからね」
「お前…それが一番の理由だ狼牙！」
「拗ねないでよいい大人が！」
「拗ねてねぇわ！！」
キャンキャンと、まるで犬が喧嘩をするように向かい合い出した2人に、辺りで見守っていた下っ端たちが焦り出す。
このふたりが本気を出したりしたらエニエスロビーは崩壊である。
「おいA！ジャブラ！！さっさと支度しねぇか！」
「もう出来てます、長官」
「この女がグズグズしてっからッ〜！！」
いてぇ！！と足をヒールで踏まれたジャブラは悲鳴をあげる。しかしその加害者たるAはすました顔でスパンダムを見つめていた。
「…仲がいいのは良いが、頼むから俺の足を引っ張るなよ」
「心得ております」
「へいへい、分かってらぁ」
俺はコイツと大人しくしてるよ、と今度はジャブラがAと馴れ馴れしく肩を組んだ。しかしいつもの事なのか、Aは嫌そうな顔もせず、当然のように受け止めていた。
「いっつも問題起こすのはアンタでしょ」
「あ？長官の陰口聞いて一人殺したのはどこのどいつだったかな？」
「あれは必要な犠牲だったのよ」
Aがジャブラを睨みつければ、ジャブラは仕方なさそうに肩を竦めて口を閉じた。これ以上なにか言えば喧嘩になるのは目に見えているし、それによって前を歩く上司が喚き散らすのも面倒くさいだろう。
「長官、我々護衛より先に歩かれては困ります」
「あ？お前らが組んで着いてんだ、心配ねぇだろ」
「……アンタほんとに、そういうとこだと思うぜ」
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作者名：Strawberry | 作成日時：2023年3月12日 0時
