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◇
ギィ、と古臭いデザインの扉が悲鳴をあげて小屋が開く。中は俺と住んでいた頃よりも質素なもので、そりゃもう本当に人一人生活してるのか怪しいレベルだった。
皿もすくねぇし金目のものもない、家の隣にファンクを出すスペースがあるところだけか、あいつの人間性がわかるものと言えば。
一歩足を踏み出せばまたギシギシと木の板が鳴る、俺はそんなことも気にせずズカズカと小屋の中に入った。
まずは俺の結婚指輪探し、まさかあいつ売ったりしてねぇだろうな？？
しかしまぁそんな考えはすぐ消える、一つだけ大きな戸棚がある。その戸棚に手をかけると随分と簡単に開いたとびら。しかし中に入っていたのは最大レベルの金庫、これか、と俺はなんの確証もないのに勝手に納得してしまう。
まさか薬指まで持ってたりするのか？そしたら最悪だ、もう腐ってるだろうに。
「……薬指がねぇ時はどこにコイツを付けたらいい？」
「……」
「ネックレスにでもするか？…いいや、チェーンが切れたら無くなっちまうし、反対指じゃあ
「……」
「……ッ〜！おい！いつまで黙りこくってる！俺が質問してるんだから応えろロブ・A！！」
俺が勢いよくふりかえって怒鳴り散らせば、次の瞬間体に来た鈍い衝撃。なに？撃たれた？
そう錯覚したのも数秒で、その衝撃の正体はA自身だったのだと気づく。
溜息をつきたくなるのを押えて俺はどうにか気道を確保しようと深く息を吸う。
「ぁ、あぁ、夢か、夢だろうか。」
「夢じゃねぇよバカ」
「毎晩夢を見るんだ、貴方が生きている夢を。最後目を覚ますと、あなたがいないこの世界に絶望してしまう」
「だから死んでねぇ、生きてるって」
「もうダメだと、思っていたんだ。」
「お前はそんなやわじゃない、そう何度も言っただろう」
「……それでも、貴方のいない世界は光がなかったんだ。」
Aはそうとだけ呟きながら俺の体を強く強く、そりゃもう強く抱き締めた。ここで気を落とす訳には行かない、頑張れ俺。
少々苦しいが、ここで可愛い嫁を抱き返してやらないのは男としてどうかと思うので必死にAの背に腕を回し、随分と小さくなってしまった背中を撫でてやった。
「……生きてる、……ほんとに、生きてるのかぁ…。」
「おー、俺様の指は無くなったけどなぁ」
「……あなたがいれば、なんでもいい。なんでもいいんです、スパンダムさん。…生きていてくれて、ありがとう」
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作者名：Strawberry | 作成日時：2023年1月16日 0時
