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第佰参拾伍話:猗窩座と言う男 ページ8

猗窩座side


きっと治す、助ける、守る。

俺の人生は妄言を吐き散らかすだけのくだらない物であった




病で苦しむ人間はなぜいつも謝るのか、手間をかけて申し訳ない。咳の音が煩くて申し訳ない。満足に働けず申し訳ない。

自分のことは自分でしたいだろう、咳だって止まらないんだ普通に呼吸出来りゃあしたいだろう

一番苦しいのは本人のはずなのに。





【…いつもごめんね、私のせいで鍛錬も出来ないし遊びにも行けない…】




恋雪は本当に体が弱かった。一晩中つきっきりで額に乗せる手拭いや寝巻きを替えたりこまめに水を飲ませて厠に行く時は当然抱えていかなければならなかった

元々俺は親父の看病をしていたし人並み外れて辛抱の利く体だったから大して辛くもない



「遊びたいとは思わない昔から、空いた時間にそこらで鍛錬してるので気になさらず」


「でも…偶には気分転換に…今夜は花火も上がるそうだから行ってきて…」


「そうですね。目暈が治まっていたら背負って橋の手前まで行きましょうか」


「えっ……」



俺はキュッと手拭いを絞る


「今日行けなくても来年も再来年も花火は上がるからその時行けばいいですよ。」



そう俺が言ったら恋雪は泣き出してしまう
看病で唯一面倒だと思ったのは会話の途中で恋雪がやたらめそめそと泣くことだった。
病床で気が滅入っているのだろうが泣かれるとどうにも居心地が悪くなる






「あー、なるほど。ハクジのハクはこれか、狛犬の狛かあ、なるほどな

お前はやっぱり俺と同じだな。なにか守るものがないとダメなんだよ
お社を守っている狛犬みたいなもんだ」



師範はガハハと笑った


侍でもなんでもない師範がこれほどの土地と同情を持っているのは老人が山賊に襲われていたのを助けた所、その老人は素流の技に甚く感動し継ぐものがいなかった土地と古い道場を師範に譲ったかららしい


しかしその土地と道場を自分たちのものにしたかったヤツらは面白くない。
隣接した剣術道場は素流道場に嫌がらせをしていた


そのせいで素流道場には門下生が増えなかった。
だがここでの稽古と恋雪の看病で俺の心は救われた。


三年経って俺は十八になった。
恋雪は十六、臥せる事もほとんど無くなり普通に暮らせるようになっていた



「狛治ちょっと」


「はい」



俺は師範に呼ばれ恋雪と師範の前に正座をする


「この道場継いでくれないか狛治

恋雪もお前のことが好きだと言っているし。」


「……は?」


俺はきょとんと恋雪を見つめた

第佰参拾陸話:狛治と言う男→←第佰参拾肆話:目覚め



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まゆゆ - ほんとに好きなな作品です!応援しています! (2021年1月23日 4時) (レス) id: b7969430ca (このIDを非表示/違反報告)
えみぃ - 面白いですね (2020年11月2日 19時) (レス) id: 742aa17169 (このIDを非表示/違反報告)
毬莉 - めちゃ好きです!もう継国兄弟最高!こんな作品を作ってくれてありがとうございます。これからも頑張って更新してください! (2020年10月25日 22時) (レス) id: 6812348321 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - めっちゃ好きです!更新待ってます! (2020年10月17日 14時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
- 更新待ってます(●´ω`●) (2020年9月20日 11時) (レス) id: 57de6b4ac5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Strawberry | 作成日時:2020年4月7日 3時

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