【鬼滅の刃】もう1人鬼を連れた隊士、居るらしい Part4

第佰肆拾参話：記憶 ページ42

巌勝(黒死牟) 視点







(お前の顔を見る度に吐き気がする)





(あの人の声ももう思い出せない)




(それなのに)




(何百年と生きていて、鮮明に思い出されるのは

一番忘れたくて、それでいて忘れたくない、お前とあの人の顔)





(父の顔も母の顔も、妻の顔も子供の顔も思い出せない中で


2人だけが鮮明だ。)





(まるで私とは真逆、


唯一無二の太陽のように、広大な大地のように、



周囲にいる人間はみな、お前に焦がれて手を伸ばしもがき苦しみ、あの人に手を引かれて安らぎを求める。




意志をそがれ、消し炭となるまで。




苦しみ、安らぐ、悪循環を伝う。






結局、今のいままで私は何も手に入れることが出来なかった。
家を捨てて、妻子を捨て、人間であることをすて、あの人の弟であることを捨てた。



俺の全てであった侍であることも捨てたというのに。



ここまでしてもダメなのか？






【道を極めたものが行き着く場所は同じだ】と二人は言った)





(しかし私はたどり着けなかった。


二人と、同じ世界を見ることが出来なかった。)


(何故、私は何も残せない…。何故、兄弟であるのに、私はあなたとこれほどまでに違う。




私は…私は、一体なんのために生まれてきたのだ。



教えてくれ縁壱、…教えてください姉上、



早く、大丈夫だと。巌勝はよくやっていると、その笑顔で褒めてください。




あなたが認めてくれれば私は何にだってなれる。


そのはずなんだ。



そのために、私はこの醜い世界にしがみついているのだから)

第佰肆拾肆話：憎悪→←第佰肆拾弐話：泣顔

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す