澁澤です。 (ページ3)

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とある村ページ3

突然狂ったように泣き叫ぶ女に中島は困惑していた。
与謝野が女の背中を優しく撫でる。女は少し落ち着いた。
与謝野「一体何があったんだい？」
与謝野が優しく問いかけると女はぽつりぽつりと話し始めた。

「……私の住んでいる山の麓の村には1000年前から霧神様と言う神様が信仰されているんです。
そして、ある風習があるらしくて……私も………今日初めて知ったのですがッ……！」

女はそこで話を切る。
与謝野は背中を撫でながら続きを促した。

「10年に1度、村の赤ん坊を殺し、生贄にする風習があるんですッ！！」

暗い御堂の中、雪のように白い髪をAは指でといていた。
炎のように赤い瞳は白いまつ毛で縁取られている。

A「ここに入れられて何百年たったんだ……？」

Aは消え入りそうな声でそう自分に問う。
御堂の外から微かに太鼓の音が聞こえてくる。
Aはそっと耳を済ませた。熟れたりんごの様な目から透明なものが溢れて肌を伝って落ちていく。

A「嗚呼、今日も私の所為であの子達は生贄に…………」

Aは顔を膝に埋めた。Aの周りを白い霧が包んでいく。

次の時、そこに居たのはAではなかった。
赤い瞳を持つ、白い鱗の龍であった。

その龍こそ、霧神様である。

そう。Aこそ、霧神様の正体である。