懐かしい話 ページ43
「懲りないね、むしろすごくない？」
数日おきに最近ラインに追加した彼らから一緒にYouTubeをしよう！といった趣旨のメッセージが届く。「そりゃそうやん」目の前の彼は人差し指を私に向けた。
場所はファミレス。鼻をくすぐるのはハンバーグが焼ける臭い。
「あの頃からずっと逆崎さんは俺のヒーローなの！」
「気のせいやって」
私と彼の出会いはきっと、互いによくないものだったに違いない。彼は私のせいで恋人と別れ、私は彼のせいで一人の友人と気まずくなった。
けれど呑気にコーラを飲む彼を見ているとあながちそうも言い切れないというのもまた事実である。少なくとも私には。
「いやまったく気のせいじゃないけど。あん時俺にジュースくれたのも、かっこいいバレーするのも逆崎さんだった」
「よく、おぼえてんね」
確かにそんなことがあった。私はあの時彼にジュースを奢ってあげて、彼らが別れた理由が自分だとも知らずに生意気なことを言ったのだ。
「球技大会とかもめっちゃすごかった！」まるで美しい記憶を辿るように彼は次から次へと嬉々として語る。
「俺らめっちゃ二階から見とってさ！逆崎さんがツーアタックした時ありえんくらい盛り上がってたもん」
「そうなの？」
「そう！まじであん時俺さ、逆崎さんかっこよくて仕方なかったもん」
息がつまる。過去の自分に笑われている気がして、ひどく情けない気持ちになった。今の私はあの頃のようにかっこいいと人の心を動かせるようなプレーは出来ない。彼は、それを知らない。
「でも私はもう、あん時みたいにはなれんよ」
戻れない。あの時の自分にはきっと、もう二度と戻れないのだ。「俺さ」
「別に逆崎さんにあん時みたいになってほしいとは思ってないよ。俺だって昔に戻ってっつわれても体力もないし。年には勝てん」
ケラケラと彼は笑った。「ただ俺は逆崎さん自体がほしーの！」ぎゅっと、右手を握られる。
「口説いてる訳じゃないけど、ホントに！俺の人生に、俺らの人生に逆崎さんがいたらもっとよくなる！きっと！」
それはどこかのおとぎ話のようで。夢のようで。
「……じゃあ、口説かれたってことで」
泣きそうになるくらいの心臓の高ぶりを、そんな言葉で誤魔化した。
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える(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» ありがとうございます！不定期な更新でしたが読了してくださりありがとうございました(*^^*) (2020年6月7日 10時) (
レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
Mrs.ぱんぷきん(プロフ) - 完結おめでとうございます！最後のところ、鳥肌が立ってしまいました…素敵な作品をありがとうございました！ (2020年6月7日 1時) (レス) id: 534e341e06 (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - らぁさん» ありがとうございます！ぜひまたお暇な時に読み返してください(*^^*)伏線や会話の回収などもありますので、いつでも彼らの物語を覗きにきてください！ (2020年6月6日 14時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - BlueMoonさん» コメントありがとうございます！嬉しいかぎりです……！最後まで読んでくださりありがとうございました！ (2020年6月6日 14時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
らぁ(プロフ) - とても素敵な物語でした！読み進めていくたびに引き込まれてました。また読み返したいと思う作品です。完結お疲れ様でした！ (2020年6月6日 0時) (レス) id: 2e4cb704c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：える | 作成日時：2020年1月5日 15時
