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懐かしい話 ページ42

「一緒にYouTubeやりませんか!」


高校の頃の同級生。それもたいして仲のよかった訳でもない彼からそんなお誘いをいただいたのは完全にバレーボールという競技をやめ、小説家を目指していた大学生の頃だった。


連絡先を交換してから互いに[よろしく!]の文字しかないトーク画面に浮かんだ[福尾です。覚えてる?]の文字。


[俺の友達が少し話をしたいって言ってるんだけど]


[小柳津てつやって覚えてる?]


トントン拍子にことは進んで、当日。当たり障りのない待ち合わせ場所のファミレスで再開したのは、かつてほんの少し話した同級生達だった。


そして冒頭へ戻る。


「いや、えっと」


「俺らと一緒に馬鹿やりませんか!」


そんな風に言った小柳津君は学生の頃よりも派手な髪色で、 けれど私に向ける目はあの頃と一切変わりなかった。「なんで私?」メンツを見るかぎり、彼らはいわゆるいつメンと呼ばれるものだったし、そもそも女の私なんか必要ではないじゃないか、と。


「あの頃からずっと、俺は逆崎さんを知りたかった」


「……わあ」


それは告白まがいなものである。顔を紅潮させて、聞く人間によれば勘違いしてしまうようなその台詞を小柳津君は口にした。


「いや!えっとさ、あの頃は逆崎さんあんま男子と話したがらんかったやん?でももう女子の目は気にならんかなあ……て」


こちらをうかがうように彼は言う。そんなことすらバレていたのかと少し驚きと、数年ごしのお誘いに思わず笑いがもれた。


バレーボールに全てをささげ、それ以外なにも他人より特出したところのないただの女を救ってくれると言うのか。


「ごめんなさい」


にこやかにそう断ると彼らは口をポカンと開けた。


「私が君らにあげられるものはなんもないよ?私の利用価値が出来たらまた誘って」


「いや!いやいや!別に俺らは逆崎さんを利用しようとしてるわけじゃない!」


分かっている、そんなことは。しかしそうやすやすと手をとれるような話でもないのだ。


その手をとってしまえば私は、彼らに甘え、すがってしまうだろうから。

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える(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» ありがとうございます!不定期な更新でしたが読了してくださりありがとうございました(*^^*) (2020年6月7日 10時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
Mrs.ぱんぷきん(プロフ) - 完結おめでとうございます!最後のところ、鳥肌が立ってしまいました…素敵な作品をありがとうございました! (2020年6月7日 1時) (レス) id: 534e341e06 (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - らぁさん» ありがとうございます!ぜひまたお暇な時に読み返してください(*^^*)伏線や会話の回収などもありますので、いつでも彼らの物語を覗きにきてください! (2020年6月6日 14時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - BlueMoonさん» コメントありがとうございます!嬉しいかぎりです……!最後まで読んでくださりありがとうございました! (2020年6月6日 14時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
らぁ(プロフ) - とても素敵な物語でした!読み進めていくたびに引き込まれてました。また読み返したいと思う作品です。完結お疲れ様でした! (2020年6月6日 0時) (レス) id: 2e4cb704c1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:える | 作成日時:2020年1月5日 15時

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