あの人と……? ページ34
ゴクリ、と豪快にジョッキをあおったAちゃんがふー、と深く息を吐いた。
紅潮した頬は年相応の色気があって、これに当てられないアイツらは本当に男なのかと彼女の親友達のアホな顔を思い浮かべ、それから視線を彼女に戻す。
よくよく考えればだからこそ彼女は東海オンエアとしてアイツらと共にいれるのだろうな、と一人で納得した。
女の中でも小柄な体に似合わず強い女である。
「酔った」
「いや冷静だな」
そういうわりにヘラりといつもとなんら変わらない笑顔を浮かべる彼女に苦笑する。「もうの飲まないの?」なんて相方がAちゃんをあおった。
「カンタ君もずっとグラス空いとらんよ?」
「今おつまみタイムだから」
「二人ともなんか食う?追加で」
ピッピッとタブレットを操作しながらそう尋ねると、「あぶりめんたいこ」と少しだけ舌ったらずな声が返ってきた。
「口まわってねえぞ」
「んんっ。あー。今まわした」
次に返ってきたのは凛とした声。器用だな、なんて笑えば彼女もケラケラ笑った。
「そういえばさ」
「ん?」
「私もうすぐ死ぬらしいんだけどね」
「……は」
今度スイーツバイキングに行こう。そんな風な言葉が続いても不思議じゃない声色。「だからか最近よく昔のこと思い出してさ」コロコロとそう笑う彼女はひどく落ち着いていた。
「……なに?ドッキリ〜?」
キョロキョロとカンタが辺りを見渡す。「や、ガチ」
「死ぬよ、普通に。私は」
「……おい」
「怒ってるやんか、トミー君」
「でも、私にはどうもできんやん?」彼女はそう言ってむにむにと俺の頬をつまんだ。「怒らんでよ」表情はいたって、いつも通り。
逆崎Aは変人だ。高校の頃はバレーボールという競技の前線で活躍し、その後小説家として多くの名作を残している。
文豪というのは元来変な人間が多かったと聞くが、小説家である彼女もその先人たちのように、例にもれずそうだった。
だからか、彼女の死こそ納得はしていないものの、彼女のこういった伝え方には彼女らしいと納得している。
きっと今日偶然でくわさなければ、彼女は誰にも伝えずに生を全うしただろう。
「バカじゃん……」
「バカだな」
「辛辣」
静かにそれぞれが酒に口をつける。「失礼しまーす。あぶり明太子でーす」間延びした店員の高い声。
「わー、ありがとうございます」
Aちゃんの声はやけに弱々しかった。
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える(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» ありがとうございます!不定期な更新でしたが読了してくださりありがとうございました(*^^*) (2020年6月7日 10時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
Mrs.ぱんぷきん(プロフ) - 完結おめでとうございます!最後のところ、鳥肌が立ってしまいました…素敵な作品をありがとうございました! (2020年6月7日 1時) (レス) id: 534e341e06 (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - らぁさん» ありがとうございます!ぜひまたお暇な時に読み返してください(*^^*)伏線や会話の回収などもありますので、いつでも彼らの物語を覗きにきてください! (2020年6月6日 14時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - BlueMoonさん» コメントありがとうございます!嬉しいかぎりです……!最後まで読んでくださりありがとうございました! (2020年6月6日 14時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
らぁ(プロフ) - とても素敵な物語でした!読み進めていくたびに引き込まれてました。また読み返したいと思う作品です。完結お疲れ様でした! (2020年6月6日 0時) (レス) id: 2e4cb704c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:える | 作成日時:2020年1月5日 15時