おかえり ページ26
無事日本に帰国。その晩、てつや君に呼び出され彼の家へ行くと「今日は久しぶりに宅飲み！」と、すでに出来上がっている彼がビール片手にそう口にした。
奥の騒がしさと彼の様子に苦笑をもらす。スタジオを借りてからめっきり彼の家へ訪れる回数が減った私は、ガチャガチャと物が散乱するこの家に少しだけ安心してしまった。
「ドイツどうだった？」
「ちょーあたり」
顔を真っ赤にしたりょう君。さりげなく私の隣に腰を下ろした彼にそう笑いかければ、「俺も連れてって欲しかった〜」とぐずった。
「お土産いっぱい買ってきたやん。サブチャンで企画まで用意したんだから許して」
「外れたら自腹でしょ？」
「その代わり外れた人には私がご飯奢ってあげる」
「捨てがたいなあ〜」
「いや当てて」
ほぼジュースのような度数のお酒。数缶だけまざった可愛らしいパッケージのそれを口にする。
「あー！りょう君がAちゃん独占しとる！」
とことこ、とそう口にして近寄ってきたざわ君。「バチ酔いしとる〜」ギュッと私の空いている方の腕に彼の腕が巻き付いた。
「酔っとらん！」
「酔っとる」
年上ながら可愛らしい。メンバー唯一の年上である彼は普段から気を張っているせいか、酒を飲むと少しばかり可愛らしくなる。それは俗に酒癖が悪い、とも言えるのだが。
「訳のち見た」
「え、ありがとう」
上目遣いで彼が言う。「めちゃくちゃに面白かった。僕らのAちゃん最高」
「ええ……。照れちゃうなあ」
仲間からの称賛の言葉が嬉しくないはずがない。まだ酔っていないはずの頬が赤くそまったと同時に、彼がニタリと口角を上げた。
「可愛い」
ちゅ、とリップ音。
「！？何してるの虫さん！」
慌てたようなりょう君が私とざわ君を引き離した。「なにさあー」とむう、とするざわ君。
「いいやん別にAちゃんなんだから！」
「よくないよくない！」
酔いが覚めた、と言わんばかりにりょう君がざわ君を咎める。「いつものことやん」と私が笑えば、楽しそうに談笑していた他の彼らも驚いたように私に目線を移した。
「いくら虫さんがキス魔でも女の子がその反応はやばくない？慣れちゃいかんでしょ」
「むしろ酔っぱらい相手に照れる方が恥ずかしいじゃん。それにほら、ざわ君は慣れてるし」
あまりのゆめ君のドン引きにそう返す。「……審議〜」なんて響いたゆう君の声に失言だったか、と頭を抱えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 389人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「YouTuber」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
える(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» ありがとうございます！不定期な更新でしたが読了してくださりありがとうございました(*^^*) (2020年6月7日 10時) (
レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
Mrs.ぱんぷきん(プロフ) - 完結おめでとうございます！最後のところ、鳥肌が立ってしまいました…素敵な作品をありがとうございました！ (2020年6月7日 1時) (レス) id: 534e341e06 (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - らぁさん» ありがとうございます！ぜひまたお暇な時に読み返してください(*^^*)伏線や会話の回収などもありますので、いつでも彼らの物語を覗きにきてください！ (2020年6月6日 14時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - BlueMoonさん» コメントありがとうございます！嬉しいかぎりです……！最後まで読んでくださりありがとうございました！ (2020年6月6日 14時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
らぁ(プロフ) - とても素敵な物語でした！読み進めていくたびに引き込まれてました。また読み返したいと思う作品です。完結お疲れ様でした！ (2020年6月6日 0時) (レス) id: 2e4cb704c1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：える | 作成日時：2020年1月5日 15時
