懐かしい話 ページ21
「すいません！」
後ろからそんな声が聞こえる。「すいません！あの！」と、バタバタと近づいてくる足音。
「あのっ！」
「……え、俺？」
グッと制服の裾を引かれて振り返ると、最近話題の逆崎Aがそこにはいた。「はい、柴田さんだよね？」キョトンと目を丸くする。
「え、うん。なんで名前知ってんの？」
「ああ、はい。これ」
彼女が差し出したのは柴田、と書かれたルーズリーフ。「ヒラヒラ落ちてくのが見えたから」どうやら落とし物を拾ってくれたらしい。
雑な字で版書されたそれ。「え、ありがとうございます」少しだけ恥ずかしさを覚えながらそれをおそるおそる受け取った。
「どういたしまして」
にこりと笑って、彼女は来た道を引き返していく。立ち止まったのは友人と思われる女子生徒の前で、わざわざ会話を中断してまで届けてくれたのかと感心した。
「りょう君さあー、逆崎さんと仲良かったりする？」
「え、なにいきなり」
購買に出掛けていった他のメンバー。残った俺とりょう君はお弁当をつつく。
「いや、今日さ落とし物届けてもらったんだよね。わざわざ追いかけてまで。りょう君って女友達多いやん。もし逆崎さんと仲良かったらお礼言っといて欲しいなと思って」
「あー、逆崎さん。俺別に仲良くはないよ。教科書貸したお礼にちっちゃいお菓子の詰め合わせみたいなの貰ったけど」
「めちゃめちゃいい子じゃん」
てつやがヒーローだ！とはしゃぐのも無理はない。気が利いて、いい子で、友達が多い上にスポーツ万能。「でも残念なことにそれだけ」
「この学校人数多いし、特に文理別れてるとまじで会わん」
「あー、確かに」
りょう君の言葉に同意する。「ねえ！ちょ、聞いて！」とはしゃいだ様子のてつやと、他のメンバーが戻ってきたのはそれからすぐのことだった。
「今度の球技大会、女子バレーで男子バスケだって！」
「それ、どうせ逆崎さん見たいとかそーゆーやつでしょ」
呆れたように口にするりょう君に「いいやん別に！」と口を尖らせるてつや。「えー俺も見たーい」純粋に彼女がスポーツ万能、というのが想像つかなかった。可愛らしい身長に柔らかい雰囲気。ただの好奇心である。
「だら！」
にっと笑顔になるてつやに、あー……と最近広まった噂を思い出す。
そりゃああんな顔で自分以外の女の話されれば、と彼女に同情した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 389人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「YouTuber」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
える(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» ありがとうございます！不定期な更新でしたが読了してくださりありがとうございました(*^^*) (2020年6月7日 10時) (
レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
Mrs.ぱんぷきん(プロフ) - 完結おめでとうございます！最後のところ、鳥肌が立ってしまいました…素敵な作品をありがとうございました！ (2020年6月7日 1時) (レス) id: 534e341e06 (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - らぁさん» ありがとうございます！ぜひまたお暇な時に読み返してください(*^^*)伏線や会話の回収などもありますので、いつでも彼らの物語を覗きにきてください！ (2020年6月6日 14時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - BlueMoonさん» コメントありがとうございます！嬉しいかぎりです……！最後まで読んでくださりありがとうございました！ (2020年6月6日 14時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
らぁ(プロフ) - とても素敵な物語でした！読み進めていくたびに引き込まれてました。また読み返したいと思う作品です。完結お疲れ様でした！ (2020年6月6日 0時) (レス) id: 2e4cb704c1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：える | 作成日時：2020年1月5日 15時
