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「自分の人生に影響を与えてくれた人、ですか」
こうやってインタビューをうけるのも何度目になるか。初めの頃はこんなものバレーとなんの関係もないじゃないかと思っていたが案外そうではないらしく、確実にこういったものを重ねるなかで会場の観戦席は埋まっていった。
「そう、ですね」
ふとよみがえる学生の頃の記憶。高校2年、3年と自分の隣にいた彼女のことを思い出した。
彼女とはいつも一緒という訳ではなかったし、ちゃんと話すのも部活終わりの数時間だけだったけれど、それでも彼女が一番の友人だったとそう言える。
「高校の頃の友人ですかね」
「高校の頃ですか?同じチームメイトでしょうか」
「いえ」
インタビュー記者はポカンと目を丸くしていた。「クラスメイトです」一度だけトスをあげた、クラスメイト。
「自分がそのー、一番参っていたというか、そんな時にですね。慰めてくれたとかじゃないんですけど、声をかけてくれて」
「へえ。どういった?」
少しだけあの時のことを思い出して、笑う。「あの、柳田選手?」と記者がいきなり笑った自分に不思議そうに首をかしげた。
「ああ、すいません。自惚れんなって言われたんです。あと、赤信号になったら止まるでしょって」
「はあ、それはまた随分」
「立ち止まって周りも見てみろ。チームメイトもいるし、自分もいるって言ってくれて。まあ、嬉しかったです」
たんたんと、いつも通りの世間話と変わらないような声だった。慰めようとしてるわけでも怒るわけでもなく。
インタビューが終わって、少しだけ遅れて練習に混ざった。ワールドカップのために集められた今年のメンバーは見知った顔からそうでないものまで、皆確実な実力を持ち合わせている者ばかりだ。
日の丸を、このチームを背負う以上練習に手は抜けない。ただ今日は全員どこかそわそわしていて、そういえば有名なスポーツ雑誌の社長直々にインタビューに来るのだったと思い出す。
また、とも思うがそれがバレーボール界に必要なことだと理解してからそれほど億劫にはならなかった。
しかし世の中何が起こるか分からないものである。集合を呼び掛けられ集められた俺の目に写った人物は、あまりにも楽しそうな笑顔を浮かべていて。
「【咲く】というスポーツ雑誌の社長をしております、逆崎と申します。今日はお時間少しだけ頂戴して、皆様の魅力を伝えられるよう善処しますね。ご協力よろしくお願いします」
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作者名:える | 作成日時:2019年11月4日 19時