赤は止まれ【柳田将洋】 (ページ3)

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部活終わり、ぶるりと体を震わせて日課となった男子バレが使う体育館へ向かう。はあ、と息を吐けばそれが白く濁って、どうりで寒いわけだと身を縮めた。

ガラリ、と体育館を開けるとそこにはすでに柳田一人だった。度々彼の隣にはチームメイトがいたりするけれど、今日は一人らしい。

バシン、といつも通りのお得意の彼のサーブはどこか荒々しく、苛立ちを感じた。「失礼しまーす」一言断りをいれて、いつも通り壁に背をよせて座る。返事はない。

「俺、今日お前にとっていい友達でいられる自信ないけど」

「なんで怒ってんの」

「自分に」

うまく出来ない自分に、怒ってる──

少しだけいつもより低い声だった。部活でなにかあっただろうことは察したが、だからといってこの日課を曲げるつもりはない。私には関係ない。「それで？」

「サーブの威力が足りない」

「他には？」

「スパイクのコースが微妙」

「うん」

「あと、レシーブが全然駄目で」

ググッと彼の手が拳を作る。確か今日、男バレは別高校と練習試合があったのだったか、となんとなくこの状況に見当がつく。

「今日たまたま調子が悪かっただけかも」

「そんなことない」

「相手のリベロがうまくコースを読めたのかもしれない」

「拾われたのは事実だ」

「レシーブはやればやるだけうまくなるよ」

「まだ、足りないのかよ」

「足りないよ」

どれだけやっても努力が足りる、なんてことはない。結果がついてこなければなんの意味もないのだ。スポーツは、勝ち負けを競うものは等しくそうである。

「柳田は一回さ、立ち止まってみてもいいんじゃない？」

「お前今足りないって言っただろ」

「足りない。けど立ち止まって見るのも大事なんじゃないの？信号が赤になったら止まるでしょ」

「たまに逆崎は意味わかんないんだよ」

その言葉に笑う。やっと彼との視線がかち合って、彼の意識がバレーボールから私へ向いた。「うける」彼のため息。

「自惚れるなよ、柳田。バレーは柳田一人で勝てる訳じゃないんだから。そんで、右にも左にも仲間がいるんだから、ちゃんと周り見渡してみたらって、そういうこと」

一人で戦うから、焦る。「そんなこと」柳田はいらついたように言った。

「わかってる？」

「わかって……るけど」

眉が下がって、きゅっと口が結ばれた。

「私もいるよ」

ね、親友。