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「あの時はありがとね」
「いやいや！ほんまによかったです」
あの日は確か雨だったし、定期がなければ大変だっただろう。拾った定期は可愛いサンリオのパスケースに入っていて、一瞬で女の子のものだと分かったから、近くにいた彼女に声をかけたのだ。
「いやー、ええ子！ほら、ちゃんと侑君見とかなあかんやろ？」
そう言われ再び視線を下へ。ペアでパス練を行っていた。フワフワと彼らの間で行き交うボールはあまりにも精密で、変な方向へ飛んでいくことはない。
パス練が終わるとそれぞれがビブスを着て、どうやらゲームが始まるらしかった。
チラリと宮君が私を見上げる。見上げられるのは初めてだった。
「み」
見とって──
パクパクと動く口の動きはそう言っていた。この前のように目を反らすことはなく、それよりもっと前のように笑って、小さく手をふった。
宮君は少し目を見開いて、顔を手で覆う。コツンと後ろから宮治君がそんな宮君を小突いていて、思わず吹き出した。
兄弟仲がいい。
ピーッという笛の合図で試合が始める。ボールを持っているのは宮君で、どうやら彼が最初のサーブらしい。
「……えっぐ」
凄いなあと思っている間に彼のサーブは大きな音をたてて相手コートに叩きつけられていた。初めて男バレの試合を見たけれど、あんな威力のサーブがあっていいのだろうか。
おしっ！とガッツポーズをきめる彼の顔は無邪気で、どこか幼い。「もう一本！」彼に対する仲間からの声援。
頑張れ、と私も彼に心の中で声援を送った。
「(……あれ)」
ふと思う。私は彼をただのクラスメイトだと思っていたけれど、どうも今はそうではないらしい。かといってこれが恋心かと言われれば、多分恋心じゃなくてもいいんだろう。
友人、という位置付けでなんの違和感もわかなかった。でも、そうだ。この気持ちは彼にとって正解じゃない。もしかしてもしかすると私は彼に期待させてしまっているのでは？
その気がないにも関わらず私は、なんでこんなところで彼の応援をしているのか。単純に彼らの頑張りを見たいと思った気持ちは確かだけれど、今の私の立場ではしてはいけないことなのかもしれない。
ボールをはじく音がたんたんと耳に残っていた。
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える(プロフ) - まる汰さん» 嬉しい限りです！すごいバレーをする侑君もちゃんと高校生なんだよって作品を書きたかったので、そう言ってもらえて嬉しいです！こちらこそありがとうございました！ (2019年8月21日 15時) (
レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
まる汰(プロフ) - めちゃくちゃ素敵でした…宮侑も主人公も普通の高校生な雰囲気がとても可愛らしくてキュンキュンしました。ありがとうございます！ (2019年8月20日 23時) (レス) id: 216222d194 (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - チャイさん» 私のほうこそいつもチャイ様の作品に心撃ち抜かれてます…。憧れの作者様にそう言ってもらえて光栄です！私のほうこそ応援してます！コメントありがとうございました！ (2019年8月19日 18時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
チャイ(プロフ) - すごく面白かったです、、宮侑の性格言動行動が全部わたしのドストライクでした、、撃ち抜かれました、、打ち返します、、満塁、、(？？) 応援してます！！！！ (2019年8月19日 17時) (レス) id: cf703f5653 (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - 赤兎リエ輔さん» ありがとうございますー！こちらこそです！ (2019年8月15日 22時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：える | 作成日時：2019年8月14日 11時
