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「やっと捕まえたわ」
あれからかれこれと一週間。放課後驚くべき早さで準備を終え、部活もやっていない私は即座に帰宅しようと急ぐ。
理由は簡単。宮君を意識してしまう。気まずい。周りからの生ぬるい視線が痛い。知らない人に名前を知られていて話しかけられる。最後が一番恐怖なのだ。
話しかけられるだけで特に何かされると言うわけでもなく、「頑張れ」と労いの言葉をかけられたり、「納得……」と頷かれたり、むしろ優しい人たちばかりだ。
これの何が怖いかというと、噂が勝手に学校内に広がり、勘違いをした人がジワジワと外堀を固めてしまっていること。
とまあそう。帰ろうとした。
「あ、あー。どないしたん?宮君」
爽やか笑顔の宮君。数人から聞くところによるとこれは完全に私限定らしい。私からすればこの爽やかさが宮君のデフォルトだ。
「わざとらしいわ。意識してくれとんの?」
右手をしっかり捕まれている。逃げられそうもなく、せめてもの抵抗と彼の目を見ないように俯く。
「……そりゃするわ。いやな、好意を抱いてくれている相手にこんな対応すんのも悪いとは思うんよ。でも私まだ混乱してんねん」
「せやから」と俯いていた顔をあげると、宮君は顔を真っ赤にさせて、空いている方の手で口元を覆っていた。
「Aちゃん、ほんまそーゆーとこズルいわあ。ええ子すぎやで。きちんとそうやって俺の好意は受け取ってくれとるんやな」
「勘違いやとか、鈍感きどるんわ申し訳ないやろ、宮君に」
「迷惑やないん?」
「……迷惑やで、迷惑。離して?」
「離さへん」
彼はクルリとそのまま私の手を引いて隣のクラスまで連れていく。「宮君。恥ずかしいから離してえや」と拒んでも、彼は「嫌や」と手を握る力を強める。
「おいサムー。ちょっと荷物とってくる間Aちゃん捕まえとって」
「私はペットか」
「ちゃうよ。俺の好きな人や」
ジワっと顔に熱がたまる。「ほんっま、勘弁して欲しいねんけど」
「……ツムがごめんな」
「どーゆー意味やねん」
宮君は丁寧に私の手を片割れに渡す。宮治君は「ごめんな」ともう一度言ってその手を握った。
「手だすなよサム」
「はよ行ってこいや」
そうやり取りする彼らは兄弟で、そんな宮君には爽やかさなんてものはない。
「……逃がしてくれへんかな?」
「ツムが面倒くさくなるから我慢しとって」
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える(プロフ) - まる汰さん» 嬉しい限りです!すごいバレーをする侑君もちゃんと高校生なんだよって作品を書きたかったので、そう言ってもらえて嬉しいです!こちらこそありがとうございました! (2019年8月21日 15時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
まる汰(プロフ) - めちゃくちゃ素敵でした…宮侑も主人公も普通の高校生な雰囲気がとても可愛らしくてキュンキュンしました。ありがとうございます! (2019年8月20日 23時) (レス) id: 216222d194 (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - チャイさん» 私のほうこそいつもチャイ様の作品に心撃ち抜かれてます…。憧れの作者様にそう言ってもらえて光栄です!私のほうこそ応援してます!コメントありがとうございました! (2019年8月19日 18時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
チャイ(プロフ) - すごく面白かったです、、宮侑の性格言動行動が全部わたしのドストライクでした、、撃ち抜かれました、、打ち返します、、満塁、、(??) 応援してます!!!! (2019年8月19日 17時) (レス) id: cf703f5653 (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - 赤兎リエ輔さん» ありがとうございますー!こちらこそです! (2019年8月15日 22時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:える | 作成日時:2019年8月14日 11時