番外編【宮侑の片想い】 ページ12
逆崎Aに惚れて1年ほどたった。惚れた経緯は覚えていない。いつの間にか目でおっていて、いつの間にか彼女の笑顔と言動に惚れていた。
2年のクラス替えで一緒のクラスに名前があったのを見たとき、遠くで見ているだけだった彼女と距離を縮めるチャンスだと思わずはしゃいだ。
「逆崎、それどこへ持ってくん？手伝うで」
「ほんまに？やった〜。これほんま重いし、遠慮せえへんで？」
彼女が持っていたのはプロジェクターと集めたプリント。遠慮しない、そういいながら彼女が俺に渡したのは軽いプリントの方だった。
「(なんやそれ、好き)」
「プリント、お願いしてええ？それのせいでこっち持ちにくいんよ」
気を使わせないようそれっぽい理由までつけて、彼女は笑った。
「いや、俺がそっち持つで」
「んーん。これは係の仕事やから。せやから宮君はそのプリントと……そやな、私の話し相手になってくれへん？」
少し照れたようにはにかむ彼女。「……好き」ポロリとそんな言葉が口からこぼれた。「え？」と目を丸くする彼女に、俺は慌てたそぶりをみせずに付け足す。
「逆崎のそーゆー優しいところ、好きやで」
「ええ、照れるわ。私も宮君の優しいところ好きやで」
少し頬を染めながら彼女は言った。けれどそれに特に意味はなく、彼女のその反応は女友達にも、俺以外の男にも同じなのだと知っている。
「ふはっ。なんで宮君の方が顔赤あしてんの？」
「言われなれとらんねん」
「え、ほんまに？」
なぜならこの優しさは彼女限定で、下心にまみれたものだから。普段は進んでこんな面倒くさいことしようとは思わないし、しない。
「ほんまやで」
「ほんなら皆は宮君の違うええところ知っとるんやな」
なんでそうなんねん。世の中Aちゃんみたいなええ奴ばっかと違うんやぞ。と、彼女に猫を被っている自分に少しの嫌悪感を抱いた。
「宮君は高校ナンバー1セッターなんやっけ」
「……知っとんの？」
「有名やん、だって。すごいなあ。いつか絶対宮君がバレーしとんの見に行くわ。私一生懸命なんかしとる人好きやねん」
職員室の教科担任の机にプロジェクターとプリントを置く。
「あ、これお礼な。なんか宮君独り占めしたみたいで他の子に悪いわあ。ほな私、少し友達んとこよって帰るから」
コロンと掌に乗せられた飴。
「ズルいわ……」
どうかこのだらしない顔を、人に見られませんように。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 224人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
える(プロフ) - まる汰さん» 嬉しい限りです！すごいバレーをする侑君もちゃんと高校生なんだよって作品を書きたかったので、そう言ってもらえて嬉しいです！こちらこそありがとうございました！ (2019年8月21日 15時) (
レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
まる汰(プロフ) - めちゃくちゃ素敵でした…宮侑も主人公も普通の高校生な雰囲気がとても可愛らしくてキュンキュンしました。ありがとうございます！ (2019年8月20日 23時) (レス) id: 216222d194 (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - チャイさん» 私のほうこそいつもチャイ様の作品に心撃ち抜かれてます…。憧れの作者様にそう言ってもらえて光栄です！私のほうこそ応援してます！コメントありがとうございました！ (2019年8月19日 18時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
チャイ(プロフ) - すごく面白かったです、、宮侑の性格言動行動が全部わたしのドストライクでした、、撃ち抜かれました、、打ち返します、、満塁、、(？？) 応援してます！！！！ (2019年8月19日 17時) (レス) id: cf703f5653 (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - 赤兎リエ輔さん» ありがとうございますー！こちらこそです！ (2019年8月15日 22時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：える | 作成日時：2019年8月14日 11時
