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「お説教ですか……」


「分かってんならいい」


授業終わり、言わずもがな岩泉さんに正座させられている。場所は変わらず実習室。私と岩泉さん以外の人はすでにいない。


「勝てると思ったか。あんなナイフ一本でブラックドッグに」


「まあ、はい」


ピクリと岩泉さんの眉が動く。事実、私はきっと勝てた。それは間違いない。けれど岩泉さんが言いたいのはそんなことじゃなくて、多分まだ沢山方法はあっただろう、ということ。


私の下した判断は少なくとも最善策ではないと、そう言いたいのだ。


「その顔はだいたい何言われるか分かってるって顔だな」


「なんとなくは」


「確かにお前は勝てるだろうな。ブラックドッグ相手でも。でもそれは怪我すること前提だろ」


否定はない。少なくともナイフ一本、ワンライフで勝てるような相手ではないのだ、ブラックドッグは。勝てても相討ち。ただ私は死なないから、結果的には私の勝ちだ。


しかし岩泉さんはどうもその考え方を改めろと言いたいらしい。


「目の前で後輩を、しかもチームの仲間を死なせる人間はいねえぞ、逆崎」


「そりゃあ勿論」


承知している。けれど魔法の使えない私は、憎むべき呪いを利用してでも戦わなければならないのだ。それこそ憎むべき呪いを解くために。


「何か言いたげな顔だな」


「いいえ?まさかあ」


言うことなんてなにもない。大切な仲間である彼らに言うべきことなど何一つないのだ。「でも」


「でもきっと、死にもしない私を心配してくれるのは、後にも先にも岩泉さん達だけなんだろうなあって」


言葉通り、後にも先にも。これから私が紡ぐ彼らよりもずっと長い人生の中で見てもそうだろうと思う。


「アホか」


ぐしゃっと雑に頭を撫でられる。「んな顔させたかったんじゃねーんだよ」と、岩泉さんは顔を歪めた。


「ただ俺らはお前をちゃんと見てるからなってことを言いたかった訳でだな」


「んっ……ふふっ。そりゃあ、嬉しい限りです」


「笑ってんじゃねえ」


その彼等の優しさに、きっと私は命を懸けられる。

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える(プロフ) - 汐見さん» コメントありがとうございます!賛否ある設定の物語ですが、そう言っていただけて幸いです(*^^*)これからもよろしくお願いいたします (2020年3月1日 11時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
汐見(プロフ) - 初見です!とても面白かったです!更新頑張ってください! (2020年2月29日 16時) (レス) id: dc0ff62b63 (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - 凜乃さん» ありがとうございます!長編の予定ですので、ごゆるりとお付き合いください。わざわざコメントありがとうございました(*^^*) (2019年12月12日 21時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
凜乃(プロフ) - 毎回とても楽しみにさせて頂いてます。更新頑張ってください (2019年12月11日 23時) (レス) id: 8218d9be2f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:える | 作成日時:2019年12月4日 17時

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