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祝福の言葉の一切がないまま、式はすでに20分が経過している。まだ少し寒さの残る講堂であくびを噛み殺すのも何度目になるだろう。
視界の端で眠気に耐えられずゆらゆらと揺れる男子生徒が度々こちらへ体重を預けてくるのを、倒れないようそっと押し返すのもまた等しく、だ。
「つまり皆さんは、」
つまり、それで、ということで。長々と繋げ話しているが、結局のところ壇上に偉そうに立つ校長先生が何を言いたいのかは分からなかった。
口からでるのは本校の歴史だとか、誇りだとかそんなものばかりで、「この学園に入学できたことに感謝しろ」と言いたげだった。
校長が言うにはあまりにも偉そうに聞こえる。事実校長は雇われの身で、所詮理事長代理なのだ。たいした力も度胸もない、肩書きだけの権力を持った人間というものは彼に限らずたたずまいが立派なものだ。
「それではここで在校生代表。3年、生徒会長、及川徹」
結局校長のお祝いの言葉は聞けなかった。その代わり入れ代わるようにして壇上へ立ったのは背の高い、遠くから見ても分かるほど顔の整った男。
「皆さん、入学おめでとうございます」
ピタリ、と右横の子の揺れが止まる。くわあっと一際大きなあくびこぼして、視線を壇上の彼に向けた。
「この学園はご存じのとおり中高一貫です。ので、見知った顔が多いと思いますが、一応自己紹介をさせていただきます。生徒会長をやらせてもらっています。3年の及川徹です。所属は青葉城西。新一年生の皆さん、是非よろしくね」
甘いマスク。所々から上がる女子生徒の声が聞こえて、人気者だなと他人事のように思う。「とまあ、堅苦しいのはここまでにして」パチン！
マイク前で彼が手を叩いた。いきなりのことで肩を揺らす新入生に壇上の彼はケラケラと笑って、それから言う。
「合格おめでとう諸君！さてこれから素晴らしい青春を、と言いたいところだけど、生憎そんな輝かしい青春を謳歌出来るのは実力者だけ。ということで早速闘技場に移動ね！」
「は」
闘技場。思わぬ単語にこの先を予想して、ブルリと体を震わせた。「なあに驚いてるのさ？」ニッと口角を上げた彼が、楽しそうに言う。
「人生を左右する所属決め。所属出来なくても自分でチームを結成すればよし。前例もあるよ。まあ大概が潰れてくけどね」
入学初日から数絞り。随分だなと、背中に冷や汗がつたった。
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える(プロフ) - 汐見さん» コメントありがとうございます！賛否ある設定の物語ですが、そう言っていただけて幸いです(*^^*)これからもよろしくお願いいたします (2020年3月1日 11時) (
レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
汐見(プロフ) - 初見です！とても面白かったです！更新頑張ってください！ (2020年2月29日 16時) (レス) id: dc0ff62b63 (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - 凜乃さん» ありがとうございます！長編の予定ですので、ごゆるりとお付き合いください。わざわざコメントありがとうございました(*^^*) (2019年12月12日 21時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
凜乃(プロフ) - 毎回とても楽しみにさせて頂いてます。更新頑張ってください (2019年12月11日 23時) (レス) id: 8218d9be2f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：える | 作成日時：2019年12月4日 17時
