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彼がこの世に生を受けた理由。それは間違いなく彼自身の、彼自身に対する呪いからである。
「おや、起きたかい?随分長いこと寝てたねェ、疲れが溜まってるんじゃないか?」
武装探偵社の医務室。Aはまだしばしばとする目をこすって、ゆっくりと体を起こした。
「懐かしい夢だったんだ」
与謝野の問いにそう返す。彼の目には寂しさを宿していて、自業自得だというのに、と自傷気味に笑った。
「あんま無理するんじゃないよ。まだ若いんだから」
「前生きてた年と足したら、与謝野さんなんかよりずっと上だよ」
「ははっ、そうかい」
Aは窓の外に視線を移す。もうすぐ日が落ちる。長く深い息をはいてベッドから降りた。
それを見計らったように「ココカラ一キロ先西!西!」と鎹鴉の声。「窓を開けていいかな」とAは与謝野に確認をとった後、窓を開けた。
バタバタバタッと世話しなく鴉がAの肩に止まる。「ココカラ一キロ先西!西!」と、耳もとで訴えた。
「……近い。与謝野さん、戸締まりはよろしくね。後今残ってる探偵社員は悪いけど、僕が戻って来るまで帰さないでもらいたい」
「わかった。気をつけるんだよ」
「勿論」
僕は鬼殺隊の柱だからな──
窓に足をかけ、Aはぐっと踏み込む方の右足に力をかける。そしてその反動で向こう側の屋根に飛び移った。
ビュンビュンと体で風を斬る。藍色の髪は風で後ろに流れ、隊服の変わりにと着用している着流しは少し胸元がはだけていた。
明るい街だな、とAは思う。夜でも沢山の灯りがついていて、それでいて色鮮やか。こんな街にでも鬼は出るのだ。
いくら明るくとも、人工の光は鬼に無害なのである。
「ええ、なにそれコスプレぇ〜?」
一つ人だかりの出来ているところを見つけた。輪になってなにかを囲んでいるようで、皆スマホをその中心に向けている。
「冗談だろ」とAは眉をよせた。グゥウ、グワァア、と低く唸るそれが、本当にコスプレをした人間に見えるのか、と。
鬼からは血の臭いがしなかった。まだ人を食ってないことに安堵すると同時に、服装や鬼の様子から、先程鬼になったばかりのものだという推測がたった。
Aは一度足を止める。ここであれの首を落として目立つのは少々不味かった。
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赫赫 - えっそこで更新停止…!?勿体ない……!!とても面白い作品です!更新して欲しいです! (2021年12月9日 7時) (レス) @page39 id: 33d74645c1 (このIDを非表示/違反報告)
10優 - すんごく面白いです!一瞬で文スト(鬼滅?)の世界に引き込まれちゃいました(笑)更新待ってます。頑張って下さい! (2019年12月4日 1時) (レス) id: 9d99cb2590 (このIDを非表示/違反報告)
六花 - あのお願いがあるのですが、逆崎君の詳しいプロフィールを教えてほしいです!無理ならば大丈夫ですよ。更新いつでもいいので頑張ってください! (2019年10月12日 19時) (レス) id: 1558ece2fb (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - ルルナナさん» ありがとうございます(*^^*)不定期な更新ですが、ぜひ逆崎君の物語にもうしばらくお付き合いください。コメントありがとうございました(*^^*) (2019年8月11日 0時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
ルルナナ(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます!此れからも頑張ってください! (2019年8月10日 23時) (レス) id: f75b5a5c4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:える | 作成日時:2019年5月25日 23時